中学生でも解ける外伝 高校入試難問69★★ 渋谷教育学園幕張高
新年になったので、高校入試が終わるまで高校入試の難問を紹介することにします。
↓↓↓ 去年もやっています ↓↓↓
問題
★★
正の整数xに対して、1からxまでの整数のうち、xとの最大公約数が1であるものの個数をf(x)とおく。
例えば、f(5)は、1から5のうち5との最大公約数が1であるものは1,2,3,4の4つであるからf(5)=4である。
f(6)は、1から6のうち6との最大公約数が1であるものは1,5の2つであるからf(6)=2である。次の各問に答えよ。
(1) f(15)、f(16)、f(17)をそれぞれ求めなさい。
(2) p、qを互いに異なる素数とするとき、
① f(p) をpを用いて表しなさい。
② f(pq) をp、qを用いて表しなさい。
③ f(pq) をf(p)、f(q)を用いて表しなさい。
ヒント、着眼点
(1)は時間を書ければ誰でもできるので省略。
(2) どうすれば分からないときは実際にp,qを具体的な素数に置き換えて計算してみるのがよいでしょう。何なら、p=3,q=5の場合は(1)で結果を出しているので、これをみてヒントを得るのもよいです。
以下、解答
解答
(1) f(15)=8, f(16)=8, f(17)=16
(2) ① f(p)=p-1 ② f(pq)=pq-p-q+1 ③ f(pq)=f(p)f(q)
解説
(1)
15と互いに素なのは、
1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15
の8つなので、f(15)=8
16と互いに素なのは、
1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16
の8つなので、f(16)=8
17と互いに素なのは、
1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17
の16つなので、f(17)=16
(2)
① f(p)は、f(17)の結果で推測できます。1からp-1まで全てpとの最大公約数が1なので、
f(p)=p-1
② p,qは互いに異なる素数であることに注意します。あえてpqと最大公約数が1でない個数を数えます。
p=3,q=5の具体例から見てみます。pq=15なので、15と最大公約数が1でない自然数は、必ず3か5で割り切れるはずです。
まず、p=3の倍数は、
1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15
5個あります。この5個というものは、
15÷3=5
としても出ます。つまりpq÷p=q個ということです。同様にq=5の倍数の個数は、
1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15
3個あります。15÷5=3個です。ここで、15という数だけどちらにも登場していることに注意します。pqはpの倍数でもqの倍数でもあります。
これを一般化すれば、次が言えます。
pqと最大公約数が1でない数はpの倍数であるか、qの倍数である。
1からpqまでの整数のうち、pの倍数はq個、qの倍数はp個ある。pの倍数でもqの倍数でもある数は1つだけある。
1からpqまでの整数のうち、pqと最大公約数が1でないものの個数は (p+q-1)個
1からpqまでの整数のうち、pqと最大公約数が1であるものの個数は
pq-(p+q-1)=(pq-p-q+1)個
よって、f(pq)=pq-p-q+1
③ ①の結果から、
f(p)=p-1...ア
f(q)=q-1...イ
ここで、②の答えを因数分解すると、
f(pq)=pq-p-q+1=(p-1)(q-1)
ア、イを代入して、
f(pq)=f(p)f(q)
(ちなみにこの答えが正しそうであることは、f(15)=8, f(3)=2, f(5)=4だからf(15)=f(3)f(5)が成り立つことを確認すればわかる。)
なかなか興味深い互いに素という性質にまつわる問題でした。p,qという文字を使った表記に慣れていないと厳しいかもしれません。
参考① 互いに素な自然数の個数を求める公式
全ての自然数に対して、互いに素な自然数の個数を求める公式が存在します。
自然数nに対して、
と表されたとき、n以下のnと互いに素な自然数の個数は、
である。
これを知らなくても何の問題もありませんが、覚えておくとどこかで役に立つかもしれません。
この式を見てすぐわかることは、
互いに素な自然数の個数は、どんな素因数を持つかによって決まるのであり、同じ素因数をいくつ持つかによらない
ということです。これはかなり重要な整数の性質です。
参考② オイラーのφ関数
この問題に登場したf(x)というものは、オイラーのφ関数という名前でよく知られているものです。参考までに、φ(n)の最初の1000個の値を見てみましょう。
参考①で見たように、どんな素因数を持つかによって(同じ素因数をいくつ持つかにはよらない)φ(n)の値が決まるので、同じ種類の素因数を持つnは一列に並びます。
グラフの一番上に見える直線は素数が並んでいることや、直線 付近に多く点が集まっているであることなども分かります。
前回
次回
written by k
中学生でも解ける外伝 高校入試難問68★ 早稲田実業高
新年になったので、高校入試が終わるまで高校入試の難問を紹介することにします。
↓↓↓ 去年もやっています ↓↓↓
問題
★
ヒント、着眼点
とできます。
以下、解答
解答
P=19
解説
ここで、nは自然数だから、P=(n-4)(n+14) が素数となるためには、
n-4=1, n+14=(素数)
となるしかない。このときn=5, n+14=19となって、P=19
初回なので優しめの問題。2014年度の小問からでした。
前回
次回
written by k
【数学小話】3:4:5の直角三角形の鋭角は何度?
3辺が全て整数である直角三角形の最初の例として有名な3:4:5の直角三角形。1:1:√2とか1:2:√3とか、鋭角が特別な値なものも習いますが、この3:4:5の直角三角形は鋭角が何度であるかは中学校では一切触れられません。今回は高校数学までの知識で、この角度を考察していきます。
問題. 上の図におけるθは何度だろうか?
1. (整数)度
2. 整数ではなく、(有理数)度
3. (無理数)度
答えは3です。角度は(無理数)度です。ちなみに、θ≒53.130102354...度です。
方針、下準備
度数法で と表されるとき、弧度法では となるので、改めて と置きなおして、
とします。これで、
「θが(無理数)度」=「θは(無理数)×πラジアン」
であることが確認できました。これからは弧度法で考えていきます。
証明の方針としては、
と書けたと仮定し、矛盾を導きます。
と書けたとしたら、
となるはずです。qπは(整数)×πなので、cosが±1になるわけです。
ここに矛盾が潜んでいます。
また、すぐわかるように、
です。ここから出発して、
の値を求めます。
証明
step1
自然数nに対して、
と定義する。この2つの数列について漸化式を作る。
このan,bnが常に5で割り切れない整数であることを示す。
初項は、
漸化式を考えたい。
よって、
同様にやれば、
が得られます。実際にan,bnを求めると、このようになります。
確かにan,bnは5で割り切れない整数のようです。では数学的帰納法でそれを示します。anは常に5で割って3余り、bnは常に5で割って4余ることに注目しましょう。*1
step2 補題
anは常に5で割って3余り、bnは常に5で割って4余る整数である。
証明
を用いて、anは常に5で割って3余り、bnは常に5で割って4余ることを数学的帰納法で示す。
n=1のとき、 より成り立つ。...①
n=kのとき、 が成り立つとすると、
n=k+1を考えると、
より成り立つ。...②
①②より、数学的帰納法から、全てのnについて、anは常に5で割って3余り、bnは常に5で割って4余る。
ということで、anは常に5で割って3余り、bnは常に5で割って4余ることが示されました。ここまできたらあと一歩です。
より、
となりますが、 は5で割り切れない整数なので、全てのnについて、
は整数でない有理数です。...(*)
step3
さて、
と書けたと仮定すると、
となります。しかし、(*)より、 は整数でない有理数なので、±1と等しくなりえない。よって矛盾。したがって
θ=(無理数)×π
である。
ということで、θは(無理数)度であることが示されました。
考察 他の整数比の直角三角形
3辺の比が整数比である直角三角形は他にも無数にあります。
などなど。
を整数として、
とすることで、ピタゴラス数を好きなだけ作ることができることは有名ですが、
どの整数比の直角三角形の鋭角も(無理数)度か?
という疑問が生じます。この予想は正しいのかどうか、皆さんはどう思いますか。
気力があったら続くかも?
次回が出来ました。全ての整数比直角三角形の鋭角が(無理数)度であることを示します。
written by k
*1:※-7は5で割って3余ります。余りは2ではありません。負の数の割り算の余りについてはめんどくさいのでここでは触れません。