【数学小話】3:4:5の直角三角形の鋭角は何度?
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3辺が全て整数である直角三角形の最初の例として有名な3:4:5の直角三角形。1:1:√2とか1:2:√3とか、鋭角が特別な値なものも習いますが、この3:4:5の直角三角形は鋭角が何度であるかは中学校では一切触れられません。今回は高校数学までの知識で、この角度を考察していきます。
問題. 上の図におけるθは何度だろうか?
1. (整数)度
2. 整数ではなく、(有理数)度
3. (無理数)度
答えは3です。角度は(無理数)度です。ちなみに、θ≒53.130102354...度です。
方針、下準備
度数法で と表されるとき、弧度法では となるので、改めて と置きなおして、
とします。これで、
「θが(無理数)度」=「θは(無理数)×πラジアン」
であることが確認できました。これからは弧度法で考えていきます。
証明の方針としては、
と書けたと仮定し、矛盾を導きます。
と書けたとしたら、
となるはずです。qπは(整数)×πなので、cosが±1になるわけです。
ここに矛盾が潜んでいます。
また、すぐわかるように、
です。ここから出発して、
の値を求めます。
証明
step1
自然数nに対して、
と定義する。この2つの数列について漸化式を作る。
このan,bnが常に5で割り切れない整数であることを示す。
初項は、
漸化式を考えたい。
よって、
同様にやれば、
が得られます。実際にan,bnを求めると、このようになります。
確かにan,bnは5で割り切れない整数のようです。では数学的帰納法でそれを示します。anは常に5で割って3余り、bnは常に5で割って4余ることに注目しましょう。*1
step2 補題
anは常に5で割って3余り、bnは常に5で割って4余る整数である。
証明
を用いて、anは常に5で割って3余り、bnは常に5で割って4余ることを数学的帰納法で示す。
n=1のとき、 より成り立つ。...①
n=kのとき、 が成り立つとすると、
n=k+1を考えると、
より成り立つ。...②
①②より、数学的帰納法から、全てのnについて、anは常に5で割って3余り、bnは常に5で割って4余る。
ということで、anは常に5で割って3余り、bnは常に5で割って4余ることが示されました。ここまできたらあと一歩です。
より、
となりますが、 は5で割り切れない整数なので、全てのnについて、
は整数でない有理数です。...(*)
step3
さて、
と書けたと仮定すると、
となります。しかし、(*)より、 は整数でない有理数なので、±1と等しくなりえない。よって矛盾。したがって
θ=(無理数)×π
である。
ということで、θは(無理数)度であることが示されました。
考察 他の整数比の直角三角形
3辺の比が整数比である直角三角形は他にも無数にあります。
などなど。
を整数として、
とすることで、ピタゴラス数を好きなだけ作ることができることは有名ですが、
どの整数比の直角三角形の鋭角も(無理数)度か?
という疑問が生じます。この予想は正しいのかどうか、皆さんはどう思いますか。
気力があったら続くかも?
次回が出来ました。全ての整数比直角三角形の鋭角が(無理数)度であることを示します。
written by k
*1:※-7は5で割って3余ります。余りは2ではありません。負の数の割り算の余りについてはめんどくさいのでここでは触れません。