日比谷高校2019年(平成31年)数学の解説
↓ここからカテゴリー別に記事を見ることができます。↓
今年もやってきました都立入試。もはや私にとってはタイムアタックと化したこの行事。今年の日比谷の問題を入手したので、いち早く解説を載せようと思います。ほかの教科の解説もいずれアップされます。
※2019/09/03追記 英語の記事は出ません。申し訳ありません。
日比谷高校2020年(令和2年)国語の解説
日比谷高校2020年(令和2年)数学の解説
日比谷高校2020年(令和2年)英語の解説
日比谷高校2018年(平成30年)数学の解説
日比谷高校2018年(平成30年)国語の解説+α
日比谷高校2018年(平成30年)英語の解説
このページは前半が問題の解説、後半が講評となっています。
解説
今年の数学は、難しい問題は解説し、簡単な問題は触れない方向でいきます。
大問1
大問1はいつもどおりの小問5つ。
(1) いきなりかなり重めの計算、かと思いきや、右の項の分子の1つめのカッコと分母の√2で約分し、2つめのカッコは√3をくくりだすと計算がかなり楽になりますが、気付いた人は少なかったかもしれません。
(3) 「aを正の値とする。」と最初にあります。xを代入するとaの二次方程式がでてきてaの値が2つ求まりますが、負の値の方は答えないように。
を代入すると、
aは正の値なので、
(4) カードが9つもあって戸惑うかもしれませんが、落ち着いて数えるだけです。
同時に取り出すとありますが、1枚目、2枚目と、引いたカードにあえて順番を付けることにすると、全ての取り出し方は9×8=72通り
1枚目が1のとき、2枚目の候補は6
1枚目が2のとき、2枚目の候補は3,6,9
1枚目が3のとき...
と1枚目が9のときまでやって、合計28通りを得ます。
よって
(5) ちょっと難しいです。長方形同士が相似であることから、対角線で切った半分の三角形同士も相似になります。すると、∠ADE=∠CBDです。よって、BとDを結んだ直線上にEがあります。あとは、AE⊥BDとなるようにEを決めればよいです。そのために、ADを直径とする円を利用すると楽です。解答は以下の通り。
大問1は以上になります。やはり計算量や思考量が都立共通とは比べ物にならないくらい多くなっています。大量の計算を素早くできるようになっておく必要があります。
大問2
続いて大問2。去年と同じく2次関数と図形の問題でした。
(2)の記述は簡単でした。等積変形の用いるだけで、AC//DBです。これは本番落としてはならない問題です。
(3)は(2)とは一転してかなり厳しいです。計算量も多くなりがちで、これは捨ててよいでしょう。
長方形ADCEが直線mによって面積が2:3に分けられています。ここでは2つの解法を紹介します。
まず、A,B,C,D,Eの座標を計算しておきます。
A(-14/5,196a/25),B(6/5,36a/25),C(11/5,121a/25),D(-14/5,121a/25),E(11/5,196a/25)
となります。また、
AE=5,AD=3a
となり、さらに、直線mの式はBの座標と傾きが-2であることから、
です。
解法1
PからCDに垂線を引いて交点をHとします。△PHQに注目すると、直線mの傾き-2から、HQ=3a/2です。
四角形ADCEの面積が5×3a=15aなので、四角形PQCEの面積は9aです。
CQ=tとおくと、PE=t+3a/2であり、四角形PQCEの面積はtを使って、
と表されるので、より、となります。
よってQのx座標はCのx座標からt少ないことから、Q(-4/5+3a/4,121a/25)
となり、これが直線m上にあるので、直線mの式に代入して、
解法2
長方形ADCEが直線mによって面積が2:3に分けられていました。そこで、AEを2:3、DCを2:3に分ける点をとり、それらを結んで得られる線分を考えます。(図中の黄色い線分のこと。)この線分も長方形ADCEの面積を2:3に分けています。黄色い線分と線分PQの交点をRとすれば、Rの左上と右下にある2つの三角形が相似かつ面積が等しいため合同で、Rは黄色の線分の中点となります。直線mはこのRを通ります。
A,Cの座標からRの座標が(-4/5,317a/50)となります。あとはこれを直線mの式に代入すればaが求まります。
大問3
お次は大問3。円が絡んだ図形問題。
(2) やや難しいです。FC=FDを示すのに、∠FCD=∠FDCを示すのだろうと考えます。模範解答ではあとはさまざまな角度をaで表していく方法をとっています。
ほかにも、∠BAC=∠AFCがいえて、それと仮定より∠BAE=∠BEAから∠CAE=∠CFEとなり∠CAE=∠CDE、という手順なども考えられます。
(3) 実は簡単です。AC=AEより△OAC∽△ACEが分かります。∠AOC=45°となります。すると錯角が等しいのでOA//CF、△OAE∽△CFEで相似比は1:√2
よってOC=2を1:√2にわけた√2側がCEなので、
相似がみつからなくても、(2)より∠CFA=45°でありそこからさまざまな角度を実際に求めていけばFEが∠CFOの角の二等分線になっていてOE:EC=1:√2など、いくつかの解き方があるでしょう。
大問4
最後は大問4。例年と同様に立体図形でした。去年に比べ図が簡素。
(2) 「直線DQと直線CPが交わるとき」というのは、結局AP=BQということです。そうすると立体APD-BQEはただの三角柱なので答えがとても簡単な式1つで終わってしまいます。受験生のなかでも、「こんな簡単でいいのか」と戸惑った人がいることでしょう。これだけではわざわざ記述にする必要がありません。よって、「なぜAP=BQになるかの説明をしっかり書け」という出題意図があると考えるべきです。実際、模範解答はその説明がほとんどを占めています。
直線DQと直線CPが交わる→2直線が同一平面上にある→面AEFBと面DHGCが平行なのでDC//PQ→AB//PQ→AP=BQ
例えばこのように示せますが、空間の面や直線の平行についての記述は少々珍しく、どう書けばよいかわからなかった受験生が多かったでしょう。
(3) A-DPQとG-DPQの体積比を聞いているので、Aから△DPQに下ろした垂線の長さとGから△DPQに下ろした垂線の長さの比を求めれば終わり。
去年のような、立体を細かく分割し、立体を足し引きして目的の形を作る方法では少し厳しそうです。
DBの中点をMとし、立方体をACGEで切った断面を考えると、以下のようになります。
でてくる数字がなかなか不穏ですが、自分を信じて計算していきます。Aからの垂線の長さは△APMの面積を利用すればすぐです。有理化の直前まで計算すると、
となります。Gからの垂線は、√43をxと√43-xにわけて、三平方を使うやり方などで求められます。こちらは最終的に有理化の直前までやると、
となります。この2つの比を簡単にすると5:11
※2020/02/04追記 ブログの読者から、長さを直接求めず、比によって求める方法を教えていただきましたので、これも紹介させていただきます。
このように、MPとEGの交点をQとすると、△AMP∽△EQPで、AM:EP=1:5
すると、AM:GQ=5:11になり、AからMPに下ろした垂線の長さとGからMPに下ろした垂線の長さの比も5:11となります。
解説は以上です。
講評
全体講評:去年と比べやや易化、計算量は増加
日比谷の特徴としてはとにかく計算が多く、今年は特にそれが強く表れたといってよいでしょう。大量の計算を正確に速くできる人はそこそこ点数が稼げます。
大問1:小問集合
(1)から(4)は計算ミスなどせずにしっかり正解したいところ。
作図は去年と同様、かなり難しいものとなっています。都立共通は問題文に直接「どこどこが90°で、〇〇=✖✖であるような点を作図せよ。」などと書かれていますが、日比谷はそうではなく、問題文の条件を整理して、自分で90°や平行などの条件を見つける必要があります。そういう意味では平面図形の知識、経験がある程度ないと作図は歯が立たないのかもしれません。
大問2:2次関数とグラフ
(1)はいつも通り必ず正解したい。また、これは珍しいのですが、(2)の記述が簡単でした。しかし(3)はかなり難しくなっていました。(2)まできっちりとって、(3)はすててよいでしょう。
大問3:平面図形
全体的にやや簡単でした。(2)の証明がうまくいかなかった人がいるかもしれませんが、(3)が取れていれば十分な気がします。(3)は与えられた条件をもとに図を修正すると平行な線が見つかるので、それに気づければすぐです。
大問4:空間図形
日比谷の空間図形は毎年似たり寄ったりな問題が出題される印象があります。(1)は簡単なので必ず正解すること。
(2)が日比谷としては珍しい問題でした。ある程度空間図形の力があれば答えはほぼ明らかに見えるのですが記述問題なので、その「ほぼ明らか」の部分を説明しろ、という意図があるととらえるべき問題でした。空間における面や直線の位置関係をしっかり理解しているかどうかが問われています。空間の面と直線の平行などの記述は書きなれている受験生の方が少ないでしょうから、説明がうまく書けず、結果的に点数の低い人が多かったでしょう。
個人的には「AP=BQとなるから求める立体は三角柱で6×a×1/2×6=18a」ぐらい書いてあると10点中7点くらいはもらえるんじゃないかと思います。
(3)はやや簡単。問題文から方針が立てやすいからです。ただ計算がやや煩雑ですから、しっかり計算しきる力が必要です。やっとたどりついた最後の問題で地獄のような計算量を目の当たりにして飛ばしがちですが、思いのほか大変ではないので(あくまで個人の感想です)、この問題はとれれば差がつきます。
各問題の難易度
〇...正解すべき
△...いくつかできなくても仕方ない
✖...解けても解けなくても合否に関係ない、捨て問、計算が大変すぎ、頭おかしい、もっと簡単な数字にしろ
平均点の予想は、記述の問題(3の2と4の2)がそれぞれ半分ずつとれ、残り3つの△と✖の分の点数を引いて、61点と予想します。
〇のついている問題を全て正解すれば51点となります。数学がやや苦手な人でも、本番はこの点数さえ超えていればまあよいでしょう。
逆に数学が得意な人は、3の2と4の2の記述でそれなりに点が稼げると思うので、80点90点も狙えます。
written by k