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日比谷高校2020年(令和2年)英語の解説

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令和2年に行われた日比谷高校の入試における英語試験問題のうち、面白いと感じられた問題を取り上げて解説していきます。英作文に関しては実践的なアドバイスを載せていますので参考にしてください。

日比谷高校2020年(令和2年)国語の解説
日比谷高校2020年(令和2年)数学の解説

日比谷高校2019年(平成31年)国語の解説
日比谷高校2019年(平成31年)数学の解説

日比谷高校2018年(平成30年)国語の解説+α
日比谷高校2018年(平成30年)数学の解説 
日比谷高校2018年(平成30年)英語の解説

 

 

今年の入試問題の全体概観

難易度 ... 難化(前年比)

 分量 ... 増加(前年比)

大問2... 平年並み 大問3...難化 大問4...難化

 

今年の英語は難しかったですね。量・質ともにここ数年の中で最も厳しい問題だったと思います。大問3で顕著ですが、設問の形式も答え難いものになり、内容一致問題における該当箇所も例年より細かい個所を捉えなければ正答に至ることができないものが増えました。また、ひっかけ問題が散見されるようになり、過去の入試問題と比べて得点が取りにくい構成になっています。

大問1、2で8割以上得点し、大問3、4で点数をかき集めるようにする戦略が、今年は有効だったでしょう。

(正直、今年の問題のように、注意力を常に要するような傾向変化は望ましいものではないように思います。高校受験問題としては前年度のレベルで十分ではないでしょうか。)

 

以下、各大問ごとに面白いと感じられた設問をピックアップして解説を加えていきます。

(国語の解説と同様に、本文、問題文を掲載しません。実際に日比谷高校を受験した方や、問題を持っていて、これから演習するつもりの方へ向けたものとなっています。

大問2

問6

4枚のイラストの中から、本文中で述べられた情報をもとにKateが着るであろう着物のイラストを選ぶ問題。正答はイ。

新傾向の問題です。

呉服店(と思しき)での会話の後半から、「梅の花や松が書かれている付け下げ」を選んだことが分かり、すぐさまイとエに絞ることができます。また、会話の前半に、店員が付け下げと訪問着の違いを説明している箇所があり、訪問着は"without a break at the seams(縫い目で途切れない)"特徴があることが読み取れます。従って、縫い目で途切れてないエは付け下げではないと判断でき、消去法にてイが正解になります。

 

この問題は、複数の箇所から情報を見つける読解力と、該当箇所における店員の説明が「付け下げではなく、訪問着の特徴を述べていること」を文脈的に把握する注意力とが求められる問題です。時間に追われて冷静さを失えば、"without a break"という表現からただちに合致する選択肢 エ(こちらは訪問着です)に飛びついてしまったことでしょう。読解力と注意力、すなわち総合力が問われるという意味では、これは難問だったと思います。入試では差がついたことでしょう。

 

来年度から始まる大学入試共通テストの英語では、従来のセンター試験とは異なった切り口からの出題が増えることが予想されています。この問題を皮切りにして、来年度の英語入試も新傾向の問題が増えるでしょう。頑張れ受験生!!

 

大問3

問1

本文の流れに沿うよう、3つ設けられた空所に適文を補充し、その組み合わせを答える問題。正答はオ。

全て文脈が明瞭な箇所であり、オが最も適切な解であることは疑いようがありません。

ただし、③の"such"が何を指しているか一読では分かりにくいですね。空所(1-a)より前に本文中でHawaiiのことをsmallだと述べている箇所は無いため、このsuchが浮いている印象を受けます。

 

過去の日比谷の入試では、各大問の問1は、解を出すのに必要な情報が少なく、易しい問題が設定されていましたが、今年は答えを出すのに本文中盤まで読み進めなくてはならず、面倒です。大問3は面倒な問題であふれかえっていますから、ここで挫けてはいけません。

 

問3 

本分の流れに沿うよう、5つの文を並び替え、2番目と4番目に来るものを答える問題。正答はウとエ。

 

この問題は色んな解き方があるのですが、ここでは①「指示語」、②「言い換え」、③「時系列」に着目する方法で解いてみます。

まず、①指示語に着目します。ア~オの主語はそれぞれ

ア:They イ:he ウ:one chief エ:some people from Australia オ:he です。

選択肢アの複数形の主語Theyに着目します。内容からこのtheyは人を指しており、theyが指せる複数人名詞を持つのはエの「some people from Australia」 しかないため、エの後にアがくると分かります。(エ→ア)

次に②言い換えに着目します。(赤字は言い換え箇所)

イ「One by one he started to rule each of the islands.」(一人ずつ、彼はそれぞれの島を支配していった。)=(空所直前)「each islands was ruled by a different chief」(それぞれの島は、(それぞれ)異なる首長によって支配されていた。)

オ「He took control of all the islands」(彼は全ての島を支配した。)=ウ「One chief, Chief Kamehameha began to have power」(ある首長、カメハメハ首長は、力を持ち始めた。)

赤字のような言い換えがなされていることと、指示語に着目することで、

/空所直前→イ / ウ→オ / エ→ア

と並ぶことが分かるでしょう。

最後に③時系列に着目し、古→新の順に並び替えると、イ→ウ→オ→エ→アとなることが分かります。(おわり)

 

この設問のような問題形式を文整序問題と呼ぶのですが、文整序問題は基本解きにくいものです。感覚で並び替えられた人もいたかもしれませんが、実際に過去問を解く際は、センスやフィーリングだけに頼るのではなく、理詰めで解けるようにしておくと良いでしょう。上のように着目するポイントを定めることで、一定の手順に従って処理することができ、正答率のブレが小さくなります。

文整序問題は「指示語(heやso,such,itなど」「接続語(however, also, insteadなど)」「時系列(過去→現在→未来に流れるように)」に着目することで解くことができます。(大学受験問題はさらに複雑なものも出題されますが)

来年度以降の受験生は、この形式で出題がなされたことに留意して、対策を積みましょう。

 

問6(難問)

本文の内容に一致するものを2つ選ぶ問題。正解はエとカ

今年の内容一致は難しかったですね。例年よりも拾わせる該当箇所が細かく、量が多い印象を受けました。大問3の長文そのものの語彙レベル、量はともに例年より高くなっていますから、さらにこのような内容一致問題が出題されると...。英語を読むのに慣れていない受験生にとっては特に厳しかったでしょう。

 

 

ア:「Big Islandを知っている人々は星の研究に興味を持っている」→本文の論理と逆なので不適。

 

イ:「最初にハワイ島に入った人々は、ポリネシアのもう一角からやってきた」→ポリネシアの一角(ニュージーランドイースター島)ではなくマルケサスからの入植者であるので不適。another corner の表す具体的な内容を読み取れないと難しいでしょう。

 

ウ:「自分たちのコミュニティに人が溢れたため、マルケサスの人々はポリネシアを去った」→住んでいた島を離れたが、それはポリネシアを離れたことを意味しないので不適。「ポリネシア」が意味する地理を読み取れているかが問われた問題です。

 

エ:「たいていの場合、マルケサスを離れる時は45人以上で船出し、新天地で新しい生活を始める」→正解。本文の「Usually, three or four canoes traveled together and, in each canoe, there were more than fifteen people. The group of people were large enough to start new life in a new place」(ふつう、3ないしは4隻のカヌーが一緒に船出し、それぞれのカヌーには15人以上乗っていた。この集団は新天地で新しい生活を始めるのに十分なほどの人数であった。)に合致します。彼らは船出の際、少なくとも3隻以上で、かつ一隻あたり15人以上乗船することから、3×15=45人以上が同時に船出していると分かります。

 

オ:「航海の間、島に近づいていることを伝えるために大きな音を鳴らす」→「島に近づいていることを示すため」ではなく、「夜に互いの位置を示すため」であるから不適。

 

カ:「ポリネシアの人々がその新しい島を見つけた時、彼らは、自分たちの文化に由来する名前をその島に与えた」→正解。選択肢における『その新しい島』とは「ハワイ島」のことを指していますから、本文中の「Polynesian people first landed on the new world and they called the place Hawaii. The name Hawaii came from the word "Havaiki." In the Polynesian culture, there was a place that all people came from and would go back to after death. That was "Havaiki."」(ポリネシアの人々はその場所に初めて降り立ち、そこをハワイと呼んだ。ハワイという名前は"Havaiki"という単語に由来している。ポリネシアの文化には、全ての人々の故郷であり、死後全ての人々が還る、そんな場所がある。それこそが"Havaiki"である。)に合致します。選択肢が「discoverd a new land」ではなく「discoverd the new land」と表記されていることに注意しましょう。theは定冠詞であり「読者が既に知っているもの=本文中に登場したもの」を指す働きを持ちます。従って、Hawaiiと書かれていなくとも、ここでは"the new land" = "Hawaii"である、と読み取らなければなりません。theの用法に慣れていなければ、自信をもって正答とするのは難しいでしょう。

 

キ:「カイリン丸が来港する前にも、ハワイの人々の世話を見るために、ハワイにやってくる日本人はいた。」→「ハワイの人々の世話を見るため」ではなく、「難破などの不慮のトラブルのために」であるから不適。(ちなみに、カイリン丸は漢字で「咸臨丸」と書くようです。)

 

ク:「沢山の人々がハワイに移り住んだため、1930年代には、日本人のおよそ4割以上がハワイに住んでいた」→この書き方だと、1930年代に生きていた日本人の半数近くがハワイに住んでいることになり、不適。本文中の「42.7% of the people who lived in Hawaii were Japanese」と非常に似ているため選びやすい。エやクを選べなかった受験生はこの選択肢に飛びついてしまったものと思われますし、実際それを狙った選択肢でしょう。

 

選択肢クの巧妙さからうかがえるように、問題は「落とすこと」「ミスさせること」を意図して作問されています。このような問題を出題しなければ差がつかないという日比谷の受験生のレベルの高さが現れた問題ともいえますが、この手のひっかけ問題は「ひっかけパターンに熟知できるため、大手塾に通う生徒が甚だしく有利」になる問題です。塾に通っていない受験生は、他の私立高校、国立附属高校の英語の問題をよく解いて、パターンに慣れると良いでしょう。

 

 

 

大問4

イラストに描かれた内容を説明し、それについて思うことを50字程以上の英語で述べる問題です。

出題形式、そして出題されるイラストの状況設定...、完全に東京大学の英作文を意識したものです。(過去の問題もそうだったが、今年は特に露骨。)

東大に求められるような英作文を高校受験にて書かされる中学生は可哀そうではありますが、試験はあくまで平等なものです。この問題では大きく差がついたことでしょう。

 

まず、イラストの状況を説明する英文を書いてみます。手始めに、状況を日本語でまとめてみます。イラストの状況としては以下の通り。

「男の子が『雨が降ってきた』と日本語で話した。しかし、男の子の持つ自動翻訳機は『雨』ではなく『飴』と解釈したことで、『飴が降ってきた』と英訳した。それを聞いた女の子は戸惑ってしまっている。」

状況はかなり煩雑ですが、仕方がありません。

面倒な状況を説明する時は、かたっぱしから説明してはいけない。これは英語だけに関わらない話ですが、具体的過ぎる説明は、冗長になり結果字数が嵩張ってしまいます。

この問題も、すぐに手を動かして書き始めるのではなく、ある程度抽象化する段階を踏んでから書き出してみましょう

例えば、「男の子の持つ自動翻訳機は『雨』ではなく『飴』と解釈したことで、『飴が降ってきた』と英訳した。」とあるが、発言内容まで説明するのは具体的過ぎます。抽象化して「機械が同音異義語の翻訳に失敗した」と説明するだけで十分です。

同音異義語」はhononymsだが、これを知っている受験生は少なかったはずです。かわりに「同じ発音だが異なる意味を持つ語」ととらえて英語で説明すれば良いでしょう。

また、「日本語で話した」や「英語で話した」などの言語情報も捨象してしまってよいでしょう。「翻訳機を用いて~を伝えようとした」とまとめてしまってOKです。

 [状況を説明する英文例]

A boy tried to tell a girl that it began to rain with a translator, but she got confused to hear what the translator said. The machine made a mistake in interpreting words which sounded the same but had different meanings. (41字)

(翻訳機を用いて、少年は少女に雨が降り始めたことを伝えようとした。しかし、彼女は翻訳された言葉を聞いて困惑してしまった。というのも、翻訳機は、同じ発音だが異なる意味を持つ単語を解釈(翻訳)し誤ってしまったからだ。)

*confuse は高校受験生にとって難しい語彙になっています。代わりに、she didn't understand what the translator said.にしても良いでしょう。

*interpretingも同じ理由で、代わりにtranslating にしても良いでしょう。

 

あとは適当に思うことを書けば良いですね。この後半パートは過去問を十分に対策された受験生なら大丈夫でしょう。「言語の理解を機械に頼ってはいけないと思った」というテーマで書いてみます。

[状況について思うことを書いた英文例]

This picture shows us that a machine doesn't understand our language. So, in understanding what others say in a different language, it is dangerous to depend on a tanslation machine completely. We should learn a language on our own.(39字)

(このイラストは、機械は我々の言葉を理解しているわけではない、ということを教えてくれる。人が人の言葉を理解するにあたって、機械に頼りっきりであることは危険だ。私たちは自分たちの力で言葉を学ぶべきである。)

 

*try to V Vしようと試みる  *be 感情表現 + to V *Vして(感情)になる *make a mistake 間違える  *in Ving Vしている最中に * depend on A Aに依存する、頼る  *on our own 自分たちの力で、自分たちだけで

 (標準的な中学英語にて学ぶ語彙・文法の範囲で書けるものにしました。)

上と下を併せて、80字程度の英作文が完成しました。(実は、これは東京大学の英作文としては標準的な要求字数となっています。)

煩雑な説明を行う際は、具体説明の列挙に終始せず、要点をズバッと書く習慣を身に着けましょう。その際、ものごとを抽象化する訓練が有効です。この問題は、そういた練習を積んでいない受験生と普段から訓練していた受験生とで、大きく差が開いたでしょう。来年以降の受験生は十分に訓練されたし。

 

(大問4を終えて)

日比谷高校の入試問題は遂にここまで難しくなったか、と思わされました。「こんな問題やってられっか!!」と思いつつ、一つ解答を作ってみました。

構成に3分、作文に10分ほどかかり、推敲に再び3分ほどかけたものになりました。実際の入試では時間が足りなくなってしまっているでしょう。この英作文を10分ほどで終わらせるのが理想です。(しかし、それはほとんど東京大学の入試が求める水準であり、読んできた英語量が大学受験生と比べて圧倒的に少ない中学3年生がその水準を達成するのは不可能なのでは?)

ともかく、量・質ともに相当なレベルの問題であるため、英語を苦手とする受験生にとっては相当に厳しい戦いとなったものと思われます。

来年以降の受験生に1つアドバイスをするならば、「CDをつかった音読学習を怠るな!」ですね。日比谷の入試においてリスニングが得点源であるから大事にせよ、ということではなく、英語の読解速度を上げるのに、耳で聴いたり口で話したり、という一連の作業が非常に有効だからです。日比谷の英語において読解速度は相当なレベルが求められていますから、1,2年生のうちから、CDを用いた音読学習を通じて読解速度を高めていってください。

 

時間配分

今年の問題に対する理想の時間配分は以下のようになるでしょう。

大問1:10分 大問2:12分 大問3:16分 大問4:12分

 

平均点は50点台に落ち込みそうですね。

 

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written by H

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