【高校英語】英文解釈 難問①
↓ここからカテゴリー別に記事を見ることができます。↓
不定期で、僕が出会ったちょっと難しい英文を解説していきます。
レベル:最難関
次の英文を和訳せよ。
No observation is more common than that of the child separated for a few weeks or months druing the second or third year failing to recognize his mother on reunion.
語彙)
the second or third year...2歳か3歳
on reunion... 再会したときに
この問題のポイントは failing to recognize ... の 部分の修飾関係の処理です。ここをyearなどにかけて読むような適当な読みをしてしまうと正しい和訳になりません。
名詞を分詞が修飾する時、名詞と分詞の間には、意味上の主語と述語の関係が成立する、のでしたね。もし、分詞であるfailing to ... が名詞yearを修飾しているととらえた場合、fail to recognize his mother(母親の認識に失敗したのは)year(年)となりますが、これは明らかに違います。"fail to recognize his mother"とある通り、failingの意味上のSは “the child”です。これなら、「その子供は、母親を認識できなかった」となり、意味が通りますね。
ありがちなイマイチ訳)
母親と再会したときに、母親を認識することに失敗してしまう、2歳か3歳の数か月か数週間、隔離された子供の観察ほど、ありふれた観察はない。(△)
一読して、あまりにも読み難い訳ですね。それだけではありません。実は、上の訳もまだ、大きな間違いを犯しています。
failngは、正しくは動名詞でthat of の目的語であり、the childはofの目的語ではなく、failingの意味上の主語としてとるのが正解です。そうとれば、最も自然な和訳になります。(模範訳は下の方にあります。)
that以下の構造を、意味上のSを消して示せば、
that(=observation) of {the child separated for a few weeks or months druing the second or third year} failing to recognize his mother on reunion.
((意味上のSが)母親を認識できなかった、ということを観察する)
この問題のポイントは、名詞+Vingには潜在的に2つの解釈の仕方がある、という点です。
名詞+Ving → の訳し方は2通り。
①「Vする名詞」←Vingを後置修飾語と考える
②「名詞がVすること」←Vingを動名詞と考え、名詞をその意味上のSと考える
この2つは、文法上全く判別がつきません。従って、名詞+Vingを見かけた場合、上の2つのどちらで訳すべきか、内容から吟味することが必要です。では、訳し分けるためには、内容のどこに着目すれば良いでしょう。基準は、名詞とVingのどちらを意味の重点にとると自然かです。今回の場合、観察の対象には、どちらが普通なのか?に着目します。
該当箇所を、
①ととる。→観察されたのは「親を分からない子供」
②ととる。→観察されたのは「子供が親を分からない様子」
どちらが自然でしょうか。
②子供が親を認識できない様子、の方が状況や訳として自然ですね。
もし、観察結果が「親を理解できない子供そのもの」だとすると、英文のobservation は「子供の表情や声、しぐさなどをつぶさに観察すること」になります。「親を認識できない子供自体を観察すること」って、そんなに”common”な観察結果なんでしょうか?
以上。模範訳例を示します。
模範訳例)
2歳か3歳の間に数週ないしは数か月に渡って母親から離された子供が、母親と再会したときに自分の母親を認識できないと観察されることほど、ありふれた観察結果はないだろう。
*observationの訳を「観察結果」に修正しました。
同じポイントを含む問題として、以下の問題があります。注意して訳してみましょう。すぐ下に答えがあります。
The disadvantage of men not knowing the past is that they do not know the present.
History is a hill or high point of vantage, from which alone men see the town in which they live or the age in which they are living.
模範訳は「人が過去を知らないことの不利益とは、現在のことがわからないということだ。歴史は、丘、つまり高くて眺望のきく地点なのであり、そこからだけ、人は自分たちが暮らす町、あるいは自分たちが生きている時代を目にするのだ。」となります。
文頭のthe disadvantage of men not knowingを、"過去を知らない人の不利益"などとしないように!
英語は外国語ですから、得意になるためには膨大な学習時間を必要とします。英語に没頭できる余裕があればいざ知らず、普通の高校生には英語だけに多くの時間をかける訳にはいきません。
そういった状況を踏まえた上で、英語の長文読解を得意とするためには、まずは短文を正確に訳せるようになることが近道です。ですが、自力で読める英文でさえ、英文の示す内容を損なわないような和訳を書くためには、高度な国語的な表現力が必要になります。
和訳をする際は自分の言葉にしっかり向き合い、一語一語に気を使うことで、表現する力を涵養することができます。和訳はみなさんの国語力を映す鏡です。言葉の身だしなみを整える気持ちで、和訳に向きあうと良いですよ。
第2回
第3回
written by H