【高校英語】英文解釈の難問③
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ここでは、不定期で僕の出会った難しい英文を紹介していきます。
第1回
第2回
レベル:難関大で差がつく
次の英文を和訳せよ。
In the West, work is looked on not as something innately good but as a miserable labor divinely imposed on people as a punishment for sin, freedom from which can be won only by faithfully following the teaching of God.
語彙) innately 本質的に. divinely 神の力で
以下、解答。
模範和訳)西洋では、労働は本質的に良いものではなく、罪を償うための罰として人々に神から課された恥ずべき苦役であるとみなされおり、この苦役から解放されるためには、神の教えに誠実に従うしかない、と思われている。
[基本的な構造解説]
息の長い英文です。随所に散見される英語的な表現を、どれだけ上手に和訳できるか?がポイントです。
文の前半の構造を見ていきます。
In the West, work is looked on not as something innately good but as a miserable labor (divinely imposed on people as a punishment for sin),
この文の主語は" work "であり、主語を受ける動詞は" look on A as B"(AをBとしてみなす) の受動態 "be looked on as B" と読み取れます。「労働は~としてみなされている」が和訳の骨格ですね。
ただし、asの前に not が見えることに注意しましょう。このnotの働きはなんでしょうか?どうやら、not A but Bの形が割り込んできているようです。AとBには、
A = something innately good (本質的に良い何か)
B=a miserable labor divinely imporsed on people as a punishment for sin(罪を償うための罰として、神より人に課された恥ずべき苦役)
Bですが、a miserable laborを、分詞が後ろから修飾しています。impose A on B (AをBに課す) + as ~ (~として) また、divinely は「神の力で」でも良いですが、imposeの意味上の主語として捉えると良いでしょう。
前半訳) 西洋では、労働は本質的に良いものではなく、罪を償うための罰として人々に神から課された恥ずべき苦役であるとみなされいる。
後半を見ていきます。
, freedom from which can be won only by faithfully following the teaching of God.
冒頭に,+関係詞があります。関係詞の非制限用法ですね。直訳では「そこからの自由」となります。これが関係詞節内の主語であり、それを受ける動詞が、can be won「手に入る」な訳です。(wonはwin の過去分詞で、ここでは受動態ですね。)
ただし、only by Ving と続いていますね。「〜することによってのみ、手に入る」と訳していきましょう。
後半訳)そこからの自由は、神の教えに誠実に従うことでしか手に入らない、と思われている。
さて、これで訳ができました。つなげてみましょう。
ありがちなイマイチ和訳)西洋では、労働は本質的に良いものではなく、罪を償うための罰として人々に神から課された恥ずべき苦役であるとみなされおり、そこからの自由は、神の教えに誠実に従うことでしか手に入らない、と思われている。
長くなりましたが、ここからが今回のメイン上達ポイントです。
[和訳上達ポイント解説]
上の訳出、freedom from whichを「そこからの自由は」と訳しました。whichに先行詞を代入すると「神から与えられた苦役からの自由」となりますね。
この日本語、どうでしょう。
文構造を捉えてはいるものの、日本語として入ってき難い、分かりにくい表現になっていませんか?
実は、このfreedom from、熟語be free from (〜から解放される)を名詞に変換した句だと考えて「〜から解放されること」と訳すと非常にしっくり来るものになります。
一度模範訳を見てみましょう。
和訳)西洋では、労働は本質的に良いものではなく、罪を償うための罰として人々に神から課された恥ずべき苦役であるとみなされおり、この苦役から解放されるためには、神の教えに誠実に従うしかない、と思われている。
いかがでしょう。さきのイマイチ訳と比べて、ずっと理解しやすい表現になりました。
freedom fromをbe free fromと変換したように、英語では名詞句で書かれている表現であっても、日本語に訳す際は動詞句に変えて訳すことで自然な表現となることが良くあります。これを「名詞構文」といい、大学受験英語の和訳でよく狙われます。
今回の和訳上達ポイントは、名詞構文に気づき、名詞句を動詞句に変換することでした。
(本文は名詞構文が関係代名詞の応用型に入り込んだ形をしていたため、勉強を積んだ人でも名詞構文だと気付きにくかったのではと思います。)
論説文の中でも、硬い文章になればなるほど、主語や目的語に名詞構文が用いられる文章が増えてきますから、複雑な名詞句や訳し難い名詞表現を見かけたら、名詞構文かと疑って動詞っぽく訳してみましょう。
以下、練習問題で名詞構文演習。
[練習問題]
次の名詞表現を分かりやすく訳せ。
(1) his failure to believe his mother
(2) mothers' sincere sacrifice of themselves to their children
*sacrifce 犠牲(名詞)
[解答]
(1)彼が自分の母親を信じることができないこと
failure to V = fail to V(Vできない)という熟語の名詞形。このように、his/myなどの所有格+名詞句で名詞構文における「意味上の主語」を表せる。
(failure to V を「Vするという失敗」と訳すのは誤り!名詞構文の中でも出題されやすい表現です)
(2) 母親が我が子のために自分達を犠牲にすること
mothers' sincere sacrifice of themselves to their children
sacrifice A to B BのためにAを犠牲にする という熟語を意識した名詞構文。
所有格のmothers' が意味上の主語、
of themselvesが意味上の目的語を表し、sincereは意味上の副詞である。
文に直すと、
Mothers sacrifice themselves to their children sincerely.
(母親が自分達を子のために、献身的に犠牲にすること)
となるので、これを意識した訳を作ること。
直訳だと「母親の自分達自身の献身的な子供への犠牲」となり、意味上の主語や目的語、修飾語のニュアンスが日本語に変換されないので分かりにくい訳になっています。
毎度毎度ですが、訳した後に日本語を吟味するプロセスを挟む習慣をつけましょう!洗練された訳を書こうと意識する中で言語力は養われていくものです。