【高校英語】英文解釈の難問②
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英文解釈①では、形ではなく内容から2つの訳を吟味する問題を出題しました。
第1回
第3回
受験レベルの英文では、しかし、①で扱ったような文構造を意味から吟味するといったポイントが問われるものは多くはありません。むしろ、その対極で「形」だけから意味を決定するものが多く出題される傾向にあります。
英文解釈②では、「形」を捉える練習として、「関係代名詞」の読み方をテーマに以下の問題を出題します。
レベル:難関
下線部を和訳せよ。(文章を抜き出しているので、意訳はしなくてよい。)
For two or three days, Madame Berger looked dreadfully worried, but then, whatever the difficulty was, it was settled; she dismissed, however, the maid to keep whom had been almost a matter of principle, for so long as she had a servant Madame Berger could look upon herself as a lady.
語注... the maid...その使用人 a matter of principle 原則、信条
解説)
主節の構造は全く難しくありません。she(S) dismissed(V) the maid(O)で、
「彼女(バーガー夫人)はその使用人を解雇した」ですね。
問題はその後ろです。
"to keep whom had been almost a matter of principle"ここをどう訳せば良いか。
whomを見て「関係代名詞」が使われていることは容易に分かります。しかし、訳せなかった人のほとんどは、だからと言ってもどう処理すべきか分からず、途方に暮れてしまったのでしょう。
「関係詞」という単元は非常に豊富な内容を含んでいます。沢山の例文、表現があり、学習者が苦手にしやすい単元の1つです。
しかし、その実、関係詞の働きは非常に単純です。ポイントは下の問題に集約されています。
問題) 下線部を適切な関係詞に直し、2つの英文を繋げなさい。
This is the house. I used to live in the house.
→This is the house in which I used to live.
この問題、どの英文法問題集にも載っている関係詞の典型題ですね。解くのも非常に容易でしょう。しかし、この「変形」こそ、すべての関係詞に通じる「関係詞のポイント」なのです。つまり、
関係詞は「ある英文を形容詞にして、別の英文と繋げる」役割を持ちます。
上記の(問題)では、「I used to love in the house」という文を形容詞「in which I used to live」へと変形したわけですね。関係詞によって、文が形容詞となったのです。関係詞によって、文と文が繋げられた、というのがポイントです。
逆に、この関係詞の性質を逆に使えば、複雑な英文を処理することができます。具体的に言えば、関係詞によって合体した2つの文を、元の別々の2つの文へと戻す作業を行うことで、英文の骨格を分解してシンプルな文へ変換できます。その結果、向き合うべき英文の構造はより単純になり、その理解はより容易になります。このような「関係詞を含んだ文を分解する」作業こそ、どんな関係詞の難問にも通じる魔法の処理なのです。
最初の問題に戻り、早速この魔法の処理を使ってみましょう。2つの文に分けるために、まずは関係詞節の範囲を絞ります。
she dismissed the maidでSVOという文型が揃っているので、これがどうやら1つの英文のカタマリのようです。ならば、the maidより後ろは、別に付け足された英文のようですね。”to keep whom “から、”a matter of principle”までが1つ英文であり、関係詞節の範囲のようです。ということは、↓の( )の中に1つ英文が含まれていることになります。では、分解という魔法の処理をしてみましょう。
the maid + ( to keep whom had been almost a matter of principle )
↓whomに先行詞 ”the maid” を代入して
... the maid.
+ To keep the maid had been almost a matter of principle. (分解完了!)
分解されてでてきた英文は、どうやら↓のようです。
To keep the maid had been almost a matter of principle.
(S ← to V句の名詞用法) V C
訳)その使用人を雇い続けることは、ほとんど信条であった。
なんと単純な英文が埋め込まれていたのでしょうか。関係詞の所為で見た目だけゴツくなっていただけで、なんと中身は中学2年生レベルのto 不定詞がSになった文だったのです。
ここまでできればあとは簡単。訳の順番を変える、国語の問題。↑の(訳)は関係詞節の和訳ですが、そもそもこれは、”the maid “にかかっていたのでしたね。あとは訳出の順序をいじり、the maid に係るようにしてあげれば、
the maid + ( to keep whom had been almost a matter of principle )
訳)(雇い続けることがほとんど信条であった)+ その使用人
となりますね。求めていた和訳が得られました。処理完了!
訳は以下の通りです。
英文)For two or three days, Madame Berger looked dreadfully worried, but then, whatever the difficulty was, it was settled; she dismissed, however, the maid to keep whom had been almost a matter of principle, for so long as she had a servant Madame Berger could look upon herself as a lady.
和訳例)2、3日に渡ってバーガー夫人はひどく心配している様子であった。しかし、その後、困難は何であれ、解決した。つまり、彼女は、雇い続けるのが殆ど(彼女の)信条であった使用人を、なんということだろうか、解雇したのだった。(信条)というのは、使用人を雇うことで、バーガー夫人は自分のことを貴婦人だと思えたのだったから。
関係詞の魔法の処理の威力、体感していただけましたか?
最後に関係代名詞を用いた分解作業の練習として、1つ類題を紹介します。
類題)以下の英文を和訳せよ。
He has become a professional tennis player to sign whom it is now required to pay more than 5 million dollars.
*sign ~と契約する
以下はその答えになります。
訳)契約するには、今や500万ドル以上をも支払うことが必要なテニス選手に、彼はなった。
構造)関係詞whomに先行詞" the tennis player "代入して、2つの文に分解すると、次の①と②の文がつながった形だと分かります。
①He has become a professional tennis player.と
②To sign the tennis player, it is now required to pay more than 5 million dollars.
(to V 句の副詞用法 目的)形式主語のit 真主語の to V
従って、以下の①と②を繋げて和訳を作れば良いですね。
①「彼はプロのテニス選手になった。」
②「そのテニス選手と契約するためには、今では500万ドル以上も払う必要がある」
①(+②)→「彼は(契約するためには、今では500万ドル以上も払う必要があるような)プロのテニス選手になった。」
となります。
関係詞の本質的な働きとは、「文と文をつなぐ」ことです。この性質をよく理解し、関係詞を含んだ文章を分解することがすぐにできるようになれば、関係詞を含む問題は、和訳、文法問題と形式を問わず、できるようになることでしょう。今回はここまで。
written by H