【数学小話】病的な数学② 歴史的に有名な反例
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歴史的に有名な反例をいくつか見てみましょう。
素数を作る式
素数というのはやはり数学においてとても重要で、大昔からあまたの数学者が素数の現れる法則を解き明かそうとしてきました。(当然、まだ分かっていません)
フェルマー数という、数学者フェルマーが考えた次のようなものがあります。
これが全ての0以上の整数nについて、フェルマー数は素数ではないか?とフェルマーは予想しました。
n=0のとき、3
n=1のとき、5
n=2のとき、17
n=3のとき、257
n=4のとき、65537
確かに、この5つは全て素数です。
しかしこの予想は成り立ちませんでした。n=5は素数ではありません。
n=5のとき、4294967297=641×6700417
素因数分解というのは出てくる素数が大きいものしかないと、とたんに困難になります。ちなみにこの反例を見つけたのはオイラーです。
反例が見つかったからこのフェルマー数は意味がないかというと、そうともなりません。では、nがどんな値のときに素数になるのか?などなど、より深い考察を招くきっかけとなるのです。
もう一つ。大天才レオンハルト・オイラーはこのような式を考えました。
この式にn=1から順に自然数を代入していくと、ことごとく素数が現れます。
n=1のとき、41
n=2のとき、43
n=3のとき、47
n=4のとき、53
n=5のとき、61
n=6のとき、71
n=7のとき、83
n=8のとき、97
…
n=40までやっても、素数しか現れません。当時のオイラーは素数を作る式を見つけた!と一瞬大喜びしたことでしょう。しかし、この式は完全なものではありませんでした。冷静になってみると分かるのですが、この式はn=41のとき、明らかに素数ではありません。こんな簡単な反例があると気づいたオイラーはさぞかし恥ずかしかったでしょう。
ちなみに、必ず素数が出てくる式も存在します。が、計算量が膨大であったり、一発で目的の値が出せなかったり、なかなか大きい数にならなかったりと、実用的ではありません。例えば、こんなものがあります。
マチャセビッチの多項式
ここに出てくる26種のアルファベットa~z全てに好きな整数を入れたとき、その値が正になるならば必ず素数になります。わあ、便利だ(大嘘)
ワイエルシュトラス関数
数IIIの最初で微分可能性がどうたら、という話をすると思います。大まかなイメージとして、「その点において微分不可能である」=「グラフがそこで折れ曲がっている(滑らかでない)」というものがあります。
例えば y=|x| は、x=0でグラフが折れ曲がっていて、x=0において微分可能ではありません。もちろん、0でない全てのxにおいて微分可能です。
このように、関数が微分できないと言ったら、(複数の)孤立点で微分できないだけで、他の部分では普通に微分できるものが考えられがちです。しかし、ワイエルシュトラスが考えたワイエルシュトラス関数は、至る所微分不可能です。
ワイエルシュトラス関数 はこのような式です。
ここでは正の奇数で、
を満たすものとします。グラフはこんな感じ。(画像はWikipediaより)
やたらめったらギザギザしたグラフになりました。この関数は至る所微分不可能な関数と言われていますが、どういう意味かというと、全てのxで微分不可能であるという意味です。どこでも微分出来ないのです。グラフをいくら拡大してみてもギザギザしていることがどこでも微分できないことを示唆しています。
この例は歴史的にとてもインパクトのあるものです。というのも、実1変数の関数は基本的に(いくつかの孤立点を除けば)微分可能なものしかないと思われていたからです。これが至る所微分不可能である証明は長いので省略します。
さて、この関数はなかなか奇妙ですよね。式自体を見ると、
ワイエルシュトラス関数は、滑らかで何回でも微分できる三角関数をたくさん足しているだけです。当然のこととして、何回でも微分できる関数同士を有限個足して得られる関数はやはり何回でも微分できます。しかし、このワイエルシュトラス関数のように無限個足すと、そうなるとは限らないのです。なかなか不思議ですね。
written by k