【数学小話】病的な数学⑤ 不思議な因数分解と円分多項式
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今回は前回までの解析から趣向を変えて、ちょっと不思議な話を見てみます。
簡単?な因数分解
まずは簡単な因数分解から始めましょう。
当然、と因数分解されます。
では問題です。次の多項式を(有理数の範囲で)因数分解してみましょう。
簡単ですかね?答えはこちら。
まだまだ行きます。
答えはこちら。
では、こちらはどうでしょう。
少し難しいですね、こんな風にできます。
⑥は、がこれ以上因数分解できないことを確認するのが簡単ではありませんが、ここではそこはよしとします。
さて、ここまで様々なを見てきましたが、次の共通点があるように予想できます。
(a) どれも(x-1)を因数にもつ
(b) nが素数なら、(x-1)でしか割り切れない。
(c) nがいくつであっても、係数は0か±1しか出てこない
実は、(a)は数IIで習う因数定理を使えば簡単に証明でき、(b)は難しいですが証明できます。
そして、(c)は成り立ちません。
不思議な因数分解
0、±1でない係数が初めて現れるのは、n=105です。
x105-1=(x-1)(x2+x+1)(x4+x3+x2+x+1)(x6+x5+x4+x3+x2+x+1)(x8-x7+x5-x4+x3-x+1)(x12-x11+x9-x8+x6-x4+x3-x+1)(x24-x23+x19-x18+x17-x16+x14-x13+x12-x11+x10-x8+x7-x6+x5-x+1)(x48+x47+x46-x43-x42-2x41-x40-x39+x36+x35+x34+x33+x32+x31-x28-x26-x24-x22-x20+x17+x16+x15+x14+x13+x12-x9-x8-2x7-x6-x5+x2+x+1)
最初に見つけた人は驚いたのではないでしょうか。さて、その後もいくつかのnで係数に絶対値が2の項が登場し、n=385では、係数が絶対値3の項も登場します。(長いのでここには書ききれません)
勿論、次数が高くなればなるほど因数分解をするのは困難になります。コンピューターがないと無理でしょう。
ちなみに、絶対値100の係数が登場するのはn=40755です。n=40755は、絶対値57から342が初めて登場します。
円分多項式
さて、いくつかのの因数分解を見てみましたが、さらに面白い関係があります。n=2,3,6を見比べてみましょう。
何かに気づきましたか?ではもう一例、n=2,5,10で見てみましょう。
2×3=6で、n=6の因数にn=2,3に登場したものが登場しています。
2×5=10で、n=10の因数にn=2,5に登場したものが登場しています。
nがどんな素因数を持つかと、がどんな因数を持つかが密接に関係しているのです。この性質を利用して大きな数をうまく素因数分解出来ないか、なんてことが考えられたりもします。
さてタイトルにもある円分多項式ですが、これはと書かれ、の因数分解に出てくる因数のうち最大次数のもので、それ以下のnで登場していないものを指します。
この多項式は、1の原始n乗根全てを解に持つ多項式です。原始n乗根とは、n乗して初めて1になる複素数のことです。この円分多項式は数論においてとても重要な存在で、まだまだ分かっていないことが多いです。
written by k