中学生でも解ける大学入試数学3★ 1993年東大
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第3回は1993年東大文系(一部改題)の問題です。おそらく東大数学の中でも簡単な問題の部類に分けられるものです。
答えを出すだけなら非常に容易ですが、なぜそれが正しいのかをしっかり説明するのは少し手間がかかる問題です。
問題
★
数列{an}を次のような漸化式で定める。
a1=1,a2=3,an+2=3an+1-7an
anが偶数となるのはnがどのような時か。
用語の解説
数列とは、文字通り数の列のことです。aの右下の数字が、何番目の数字かを意味しています。
a1=1,a2=3というのは、1番目の数字が1、2番目の数字が3であることを意味しています。
漸化式というのは、数列の隣り合ったいくつかの数字の間にある関係を表す式のことです。
an+2=3an+1-7anは、n+2番目の数は3×(n+1番目の数字)-7×(n番目の数字)により求められるということです。(nにはあらゆる自然数が入ります。)
例えば、n=1を代入すればa3=3a2-7a1なので、a3=3a2-7a1=3×3-7×1=2
ヒント、着眼点
実際に3番目以降を計算して求めてみます。それである程度の予想を立てます。
a3=3a2-7a1=3×3-7×1=2
a4=3a3-7a2=3×2-7×3=-15
このように、3倍した1つ前と7倍した2つ前を引き算することで次々と数列の数字が求められます。
どうやら、nが3の倍数の時、anが偶数となっているようです。
ここまでは容易にたどり着くことができるかと思います。大学入試では、この表を書いて「だからnが3の倍数の時」としてはいけません。なぜそうなるのかの説明(証明)を書かなければなりません。
では、なぜnが3の倍数の時だけ偶数となるのか。この先ずっとnが3の倍数の時だけであることを証明してみましょう。
さて、漸化式をもう一度見てみます。
an+2=3an+1-7an
anとan+1からan+2を求めるために引き算をしています。この引き算する2つの数の偶奇を考えてみます。
偶数-偶数=偶数
奇数-奇数=偶数
偶数-奇数=奇数
奇数-偶数=奇数
3an+1と7anがそれぞれ偶数となるのか?奇数となるのか?これが重要です。
以下、解答
解答
漸化式an+2=3an+1-7anにおいて、anとan+1の偶奇によってでan+2の偶奇がどうなるかをまとめると、以下のようになる。
a1は奇数,a2は奇数なので、n=1の時、④によりa3は偶数。
また、mを自然数とし、
m=1の時、a3m-2=a1は奇数,a3m-1=a2は奇数,a3m=a3は偶数である。
m=kの時、a3m-2は奇数,a3m-1は奇数,a3mは偶数と仮定すると、上の表の④、③、②の順で、直ちに
a3m+1=a3(m+1)-2は奇数,a3m+2=a3(m+1)-1は奇数,a3m+3=a3(m+1)は偶数であると分かる。つまりm=k+1の時も成り立つ。
よって数学的帰納法よりすべての自然数のmについて、a3m-2は奇数,a3m-1は奇数,a3mは偶数となるので、数列{an}は奇数、奇数、偶数を繰り返す。
よってnが3の倍数となるとき。
解説
この問題の採点のポイントは、数列が{奇数奇数偶数}を繰り返すことを数学的に、厳密に、証明できるかどうかでしょう。今回の解答では数学的帰納法を用いました。
数学的帰納法とは、高校で習う証明に使われるテクニックのことで、
このような論法のことを言います。(Wikipedia"数学的帰納法"より引用)
(2.について、「p⇒q」は、「pならばq」を意味します。「x=3⇒x>0」というような使い方をします。)
もう少し分かりやすく感覚的に説明すると、
n=1がok。n=1がokならn=2でもok、n=2がokならn=3でもok、n=3がokならn=4でもok、n=4がokなら...
このように、1から順番にすべての自然数でokだということを言っているわけです。
2.の文章によって、全ての自然数で成り立つことを可能とさせているわけですね。
この問題の解答では、
m=1の時「a3m-2は奇数,a3m-1は奇数,a3mは偶数」が成り立つ。
m=kの時「a3m-2は奇数,a3m-1は奇数,a3mは偶数」が成り立つなら、n=k+1でも「a3m-2は奇数,a3m-1は奇数,a3mは偶数」が成り立つ
という形で数学的帰納法を用いることで、数列が{奇数奇数偶数}を繰り返すことを証明しています。
説明が上手にいけば、数学的帰納法を用いなくてもよいので、中学生でも十分証明可能な問題でした。
前回
中学生でも解ける大学入試数学2 2005年東大 - 日比谷高校のススメ
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written by k