【数学小話】無限と有限のお話①
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無限とは何でしょうか?
「一番大きな数」「とにかく大きな数」と思ったそこのアナタ、大間違いです!
数回に分けて無限とはどのようなものか、無限をどのように扱うのかについて解説していけたらなと思います。
・無限とは
そもそも、無限は数ではなく概念です。
無限というのは、文字通り「限りの無いこと」です。とにかく大きい数ということではなく、どこまでいっても終わりがない状態を指す言葉というほうがより適切です。
数学をしっかり勉強している人(具体的に言うと、大学一年の数学を勉強している人)は、次のような言葉に眉をひそめます。
自然数は無限個ある。
この言葉を聞いて「どこがおかしいの?」と思った人、無限の定義をもう一度確認しましょう。
無限は限りがない状態を表すものです。大事なことなので二回言いますが、状態を表す言葉です。
数が少ない状態を少数といいますが「少数個」と言いますか?普通は言いません。
ならば、「無限個」という言葉も普通用いるべきものではないです。(ただし、慣用的にしばしば使われます)
「無限個」いう言葉は、意味が誰でも推測でき、言いたいことが伝わるからか、一般的に広まってしまっているようです。数学者は基本この言い回しはしません。次のように言います。
自然数は無限に多く存在する。
なぜ「個数個」がよくないのか。理由は主に2つあります。
- 「無限」は状態を表す言葉であり、個数として用いるべきではないから。
- 自然数が数えきれる存在のように聞こえてしまうから。
無限に多いものの個数は定義できないということはかなり重要なことなので覚えてください。
・ことわり
私はこの「無限個」という言葉は数学用語でなくあくまで日常会話で使われる一般的な言葉として捉え、当ブログでも使っていきます。「無限に多い個数」という意味で使っていきます。
・最も大きい数とは
ご存知の方も多いかと思いますが、最も大きい数というものはありません。なぜ最も大きい数がないかというと、1を足していけばどこまでもより大きい数を作ることができてしまうからです。
ーここで注意ー
あくまで、全ての整数の範囲において、最も大きな数はないということを言っています。
例えば、負の整数の範囲において、最も大きな数は-1です。考える範囲によっては当然最も大きい数が存在してしまうこともあります。
・ゼノンのパラドックス
「アキレスと亀」という名前で知られる、ゼノンが唱えた有名なパラドックスです。アキレスというのは、アキレス腱の由来にもなっている、走ることが速い人物の名前で、このパラドックスの内容は、
「たとえ走るのが速いアキレスであっても、少し前にいる亀を追い抜かすことはできない」
というものです。
亀が少し前にいる状態でアキレスと亀が同時にスタートします。アキレスが最初の亀の位置についた時には、亀が少し前へ進んでいます。亀がいたその場所にアキレスがつくと、亀はまたほんの少し前に進んでいます。
このように、亀は常にアキレスのほんの少し前にいるので、いつまでたっても追いつけないというのがこのパラドックスの考えです。
「アキレスが亀のいた地点に行く→その間に亀がほんの少し前に進む」
これが無限に繰り返されるのです。
無限に繰り返されるので、いつまでたっても終わりがない、よって追いつかないというこのパラドックスは、長年数学者を苦しめました。ゼノンは紀元前5世紀の古代ギリシア哲学者ですが、これを解決に導く現代数学が生まれたのは20世紀です。2500年近くもこの疑問に誰も納得のできるよい反論ができなかったのです。
ではどのようにこの問題を解決したのか。それは次回話していこうと思います。
writtwn by k