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【数学小話】いろいろ拡張しよう ~マイナス2分の1乗とは?~

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※2019/04/18 加筆修正

 

数学の面白さとは何か。数学の良さとは何か。これは数学を勉強する上で知っておくべきことです。面白さを感じず、利点も分からず、ただ数と文字をこねくり回すだけのものだと思いながらやる数学ほどつまらないものはありません。
数学の発展させかた、理論の構築方法として、「必要最小限のルールを決めてそこから様々なことを導く」というものがあります。
今回は理論の発展の例として、拡張についてお話します。
拡張とは、ある範囲内で可能であったことを、それよりも広い範囲で可能にすること」です。抽象的すぎて分かりにくいと思うので、具体例を示します。

 

指数の拡張

中学校までに、指数法則を身につけさせられます。その法則を式で表すと以下の通りです。
(1) axay=ax+y
(2) (ax)y=axy

このように式で教えられる機会が無かったとしても、式の意味を考えれば、習ったことだと確認できるでしょう。
(1) 例えば何かの2乗と3乗をかけると、何かの5乗となる。このように、同じものの何乗かと何乗かをかけるときは指数を足す。
3^2\times3^3=(3\times3)\times(3\times3\times3)=3^5
(2) 例えば何かの2乗そのものを3乗すると、何かの6乗となる。こっちの場合は指数をかける。
(3^2)^3=3^2\times3^2\times3^2=3^6

さて、この2つが指数に関する最小限のルールです。
中学校まででは、指数は自然数の時のみを考えた、ということを確認しておきましょう。
では拡張していきます。先ほど述べた2つのルールが守れるのであれば、指数は自然数である必要はないのです。

 

0乗

数学が得意なら、中学生でも知っているかもしれません。0乗すると1になります。証明は次の項目でまとめてします。 

(負の数)乗

3乗、2乗、1乗から0乗を作ることができると、同じやり方で-1乗、-2乗も分かります。
-x乗はx乗の逆数と等しいのです。(x乗)分の1とも言えます。

そのやり方は以下の通りです

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この考えを使えば、どのような数であっても0乗すると1であることがわかりますね。
この画像で説明したものは直観的な説明であって、厳密な証明ではないので、証明も載せます。

0乗が1になる証明

指数法則 axay=ax+y
この式にy=0を代入してみると、
axa0=ax
両辺axで割ると、
a0=1
よって0乗すると1になります。

(注:0の0乗は考えません。上の証明にa=0を代入すればうまく行きそうですが、両辺axで割ることが0で割ることになってしまうのでできません)

-x乗がx乗の逆数と等しい証明

指数法則 axay=ax+y
この式にy=-xを代入してみると、
axa-x=a0=1
両辺axで割ると、
a-x=1/ax
よって-x乗するとx乗の逆数になります。
(注:0のマイナス乗も考えません。)

 

これで、整数であれば(負でも)何乗でも扱うことが出来るようになりました。実際に適当な数で計算してみると、
2^3\times2^{-4}=2^{-1}\\8\times\frac{1}{16}=\frac{1}{2}
確かに指数法則を満たしています。指数について、自然数から整数へと拡張できました。

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有理数

整数乗は終わったので、有理数へ移っていきます。
2分の1乗や、132分の331乗など、ありとあらゆる有理数乗について考えることができるようになります。
指数法則の2つめの式を使えば行けます。

2分の1乗

指数法則 (ax)y=axy
この式にx=1/2,y=2を代入しましょう。ついでにx=1/3,y=3を代入したものも用意しておきます。

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上の式の意味を考えてみましょう。a^{\frac{1}{2}} はいくつのことかしりませんが、それを2乗したらa^1 つまりa そのものになりました。
2乗すると1乗になるものといえば...?
そう、aの2分の1乗はルートaのことだったのです。
a^{\frac{1}{2}}=\sqrt{a}
ついでに下の式の意味を考えれば、3分の1乗は3乗したら1乗になるもののことなのです。じつは、三乗根という言葉があります。∛と書きます。
これらの話を発展させると、aのn分の1乗という数を作ることができて、これはn乗したらaになる数のことで、aのn乗根といいます。

さらに、分子が1でない有理数においても(有理数)乗はできます。
指数法則の(1) axay=ax+yを使えると思えば、例えば、
a^{\frac{1}{3}}\times a^{\frac{1}{3}}=a^{\frac{1}{3}+\frac{1}{3}}=a^{\frac{2}{3}}
3分の2乗は、3分の1乗を2乗すれば得られます。同じことをやれば、a^{\frac{1}{p}} をq乗すれば、a^{\frac{q}{p}} が得られます。こうして、どんな(有理数)乗も得られます。

 つまり、aのp分のq乗は、p乗したらaになる、aのp分の1乗をq乗したものです。
(a^{\frac{1}{p}})^q=a^{\frac{q}{p}}

 これで好きな数の有理数乗ができるようになりました。

 

 さて、タイトルの「aのマイナス2分の1乗」はいくつかというと、
・マイナス2分の1乗は2分の1乗の逆数
・2分の1乗は2乗すると1乗になるもの、つまりルートのこと
ということから、
\displaystyle a^{-\frac{1}{2}}=\frac{1}{\sqrt{a}}
ルートaの逆数となりました。

 

今回は以上です。決められた最小限のルールを準備し、あとはそのルールを守り続けられる範囲で対象とする数の範囲を広げる、これが拡張でした。
普段特に気にしない指数だけでも、これだけの奥深さがありました。

 

 

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