日比谷高校のススメ

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【数学小話】中学校では教えてくれない数の性質④ 素因数分解

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素因数分解の一意性

素因数分解は積の順番を除いてただ一通りである。 

つまり、素因数分解は必ず同じ結果になるということです。

Aを素因数分解したらあるときは53×71になり、あるときは13×19×43だった、なんてことにはなりません。これは経験則として誰もが知っていることでしょう。

 

これだけです。これだけの短い内容ですが、とてもとても重要なことです。

素因数分解を使って解く問題を少しみていきましょう。

 

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例題

10!=10×9×8×7×6×5×4×3×2×1は末尾に0がいくつ並ぶか。

解答

10!=10×9×8×7×6×5×4×3×2×1を素因数分解すると、

28×34×52×7となる。2で8回、5で2回割り切れるので、10=2×5は最大2回割り切れる。

よって末尾に0が2個並ぶ。

解説

「Aの末尾に0がn個並ぶこと」は「Aが10でn回割り切れること」と言い換えることができます。

「10×9×8×7×6×5×4×3×2×1を素因数分解する」は何をするのかというと、

10=2×5, 9=3×3, 8=2×2×2, 6=2×3, 4=2×2と、かけられている数を全て素因数分解し、結局2は何個、3は何個あるのかをカウントすることになります。すると、2は全部で8個、3は4個、5は2個、7が1個あるので、28×34×52×7となります。

ここで、10=2×5より、Aが2と5のセットで何回割り切れるかが重要になります。 

参考: 10!=3628800

 

 

問題

1\times2\times3\times\dots\times29\times30 は2で何回割り切れるか。

 

発想

「2で何回割り切れるか」と、「素因数分解したときの2の指数がいくつか」は同じ。

1から30まで、それぞれ素因数2をいくつ持つか調べて、その和を求めてもよいです。今回の解法は少し違う方法で求めています。

 

解法

2の倍数は、30\div2=15 より、15個

4の倍数は、30\div4=7\cdots2 より、7個

8の倍数は、30\div8=3\cdots6 より、3個

16の倍数は、30\div16=1\cdots14 より、1個

32の倍数はない。

よって、1\times2\times3\times\dots\times29\times30 は素因数2を15+7+3+1=26個もつから、26回

 

 

この問題の、素因数2の個数、つまり2で割れる回数は、このようなことをイメージして解くのがよいでしょう。

f:id:hby:20190410211642j:plain

①1から30を一列に並べ、2で割れるものは2で割って、商を下に書く。

②このようにしてできた新しい列を見て、2で割れるものは2で割って、商を下に書く。

③ ②を繰り返す。

これをすると、最初は15回割れ、次は7回、次は3回、最後は1回割れます。合計は15+7+3+1=26回。

解法でなぜ2の倍数とか8の倍数とか言っているかというと、

 

2で1回以上割れるものは2の倍数、

2で2回以上割れるものは4の倍数、

2で3回以上割れるものは8の倍数、

...

2でn回以上割れるものは2nの倍数、

とそれぞれ言えるからです。

今回の解法にはこのような背景がありました。

 

例題

\displaystyle \sqrt{12+n^2}が整数になる自然数nを全て求めよ。

解答

\displaystyle \sqrt{12+n^2}=m (mは整数)とおく。両辺を2乗して、

\displaystyle 12+n^2=m^2

\displaystyle m^2-n^2=12

\displaystyle (m-n)(m+n)=12

(m-n)と(m+n)は12の約数である。

m-n<m+nで、どちらも正であることに注意すると、

(m-n,m+n)=(1,12), (2,6), (3,4)が考えられる。

(m-n,m+n)=(1,12)のとき、(m,n)=(13/2,11/2)で整数とならないので不適。

(m-n,m+n)=(2,6)のとき、(m,n)=(4,2)でこれは解となる。

(m-n,m+n)=(3,4)のとき、(m,n)=(7/2,1/2)で整数とならないので不適。

以上より、n=2

 

(m-n,m+n)=(1,12)のときと(m-n,m+n)=(3,4)のときは、具体的にm,nを両方計算しなくても、どうせ不適になることは簡単に調べられます。

例えば(m-n,m+n)=(1,12)のとき、1+12を計算します。これが奇数の時点で、実は不適だと分かります。

m-n=1...①

m+n=12...②

①+②を計算すると、2m=13となります。左辺が2mなので、右辺が偶数でないとmは整数になりません。

 

最後に今やった問題の応用問題を紹介して終わりにしようと思います。高校レベルです。

問題

\displaystyle \sqrt{2^8+2^{11}+2^n}が整数となる自然数nをもとめよ。

解答

\displaystyle \sqrt{2^8+2^{11}+2^n}=mとして両辺を2乗すると、

\displaystyle 2^n\\\displaystyle =m^2-2^8-2^{11}\\\displaystyle =m^2-2^8(1+2^3)\\\displaystyle =m^2-2^8\times9\\\displaystyle =m^2-(3\times2^4)^2\\\displaystyle =(m-48)(m+48)

素因数分解の一意性より、

\displaystyle m-48=2^s,\ m+48=2^t,\ s+t=n

となる自然数s,tが存在する。\displaystyle m=2^s+48,\ m=2^t-48だから、

\displaystyle 2^s+48=2^t-48\\\displaystyle 2^t-2^s=96\\\displaystyle 2^s(2^{t-s}-1)=2^5\times3

\displaystyle 2^{t-s}-1が奇数であるから、素因数分解の一意性より、

\displaystyle 2^s=2^5,\ 2^{t-s}-1=3

よって\displaystyle s=5,\ t=7,\ n=12 

 

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 written by k

日比谷高校漢字講座 Part7

第一問  次の漢字の読みを答えよ。

 

1. 人のである。

2. 良い塩梅を探る。

3. 真っ新な状態を維持する。

4. 突飛な発想を推す。

5. 紺屋の白袴

 

 

第二問  次のひらがなを漢字に直せ。

 

1. 授業のいっかんで農家を訪ねる。

2. 給料日前ですかんぴんだ。

3. みえをはる。

4. めんぺきくねん

5. はがんいっしょう

 

 

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以下、答えになります。

 

第一問

1. さが

2. あんばい

3. まっさら

4. とっぴ

5. こうや

 

第二問

1. 一環

2. 素寒貧

3. 見栄

4. 面壁九年

5. 破顔一笑

 

 

【正答率目安】

8問〜: 合格者平均は堅い。

6-7問: 受験者平均並み。さらなる高みを目指しましょう。

〜5問: 要対策。危機感を持って。

 

では、また次回。

 

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次回

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written by Akky

中学生でも解ける大学入試数学51★★ 2019年中央大

 

問題
★★

ある規則に従って、次のように分数を並べる。

\displaystyle\frac{1}{1},\ \frac{1}{2},\ \frac{4}{2},\ \frac{1}{3},\ \frac{4}{3},\ \frac{9}{3},\ \frac{1}{4},\ \frac{4}{4},\ \frac{9}{4},\ \frac{16}{4},\ \frac{1}{5},\ \frac{4}{5},\ \frac{9}{5},\ \frac{16}{5},\ \frac{25}{5},\ \frac{1}{6},\ \dots

(1) 最初から20番目、50番目、200番目の分数は何か。(約分しなくてよい)

(2) 最初から200番目までの間に、1と等しい分数はいくつあるか。

 

 

 

ヒント、着眼点

まずは分数の並びの規則を見ぬいてください。分母だけを見ると、分母1が1つ、分母2が2つ、分母3が3つ、というようになっています。そこで、最初の1つを第1グループ、次の2つを第2グループ、次の3つを第3グループ、...とします。

\displaystyle\underbrace{\frac{1}{1}}_{1}\ {\LARGE |}\ \underbrace{\frac{1}{2},\ \frac{4}{2}}_{2}\ {\LARGE |}\ \underbrace{\frac{1}{3},\ \frac{4}{3},\ \frac{9}{3}}_{3}\ {\LARGE |}\ \underbrace{\frac{1}{4},\ \frac{4}{4},\ \frac{9}{4},\ \frac{16}{4}}_{4}\ {\LARGE |}\ \underbrace{\frac{1}{5},\ \frac{4}{5},\ \frac{9}{5},\ \frac{16}{5},\ \frac{25}{5}}_{5}\ {\LARGE |}\dots

第nグループの分数の分子は、12からn2までが並んでいることが分かります。

ここで、このようにグループ分けをする利点は、第nグループの最後の分数が最初から何番目かすぐわかることです。

例えば、第2グループの最後の分数は1+2=3番目、第4グループの最後の分数は1+2+3+4=10番目となっていて、これを一般化すると、

第nグループの最後の分数は1+2+3+\dots+n=\frac{n(n+1)}{2}番目

となります。 

(1からnまでの和がこのように表されることは既知とします。)

 

 

これをもとに、20番目、50番目、200番目に迫っていきましょう。

 

(2)は、闇雲に探すのではなく、分数が1と等しくなるとき、分母と分子との間にどのような関係があるのかをしっかり考えてみましょう。(1)で200番目の分数を求めたので、これをうまく活用できればすぐ解けます。

 

 

以下、解答

 

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解答

(1) \frac{25}{6},\ \frac{25}{10},\ \frac{100}{20}

(2) 4つ

 


解説

(1) 第1グループから第nグループまでにある分数の個数を具体的に計算して求めて見当をつけます。

 

1+2+3+4+5+6=21より、第6グループの最後の分数は最初から21番目になり、その分数は36/6である。20番目の分数はその一つ前の分数だから、25/6

1+2+...+9=45, 1+2+...+10=55より、50番目の分数は、第10グループ内の5番目の分数だから、25/10

1+2+...+19=190より、200番目の分数は、第20グループの10番目の分数だから、100/20

 

(2)

分子は常に平方数であるから、分数が1と等しいとき、分母も平方数でなければならない。(1)より、200番目の分数が100/20であるから、200番目までの分数で、分母が平方数となるのは、分母が1,4,9,16のときである。

第1グループの1番目の分数は1/1

第4グループの2番目の分数は4/4

第9グループの3番目の分数は9/9

第16グループの4番目の分数は16/16

よって、この4つである。

 

 

 

 

補足

(1)は、要するに、1からいくつまでを足したら50や200に近くなるかを求めるのがメインでした。それが見つかれば、あとは1つずつ分数を書くなりなんなりで求められるので、後半は消化試合です。

ヒント、着眼点で述べたように、1からnまでの和は\frac{n(n+1)}{2} と表されます。これに(=200)などとくっつけて2次方程式を解くのはあまりお勧めしません。

\frac{n(n+1)}{2} はだいたい\frac{n^2}{2} だと思って、

\frac{n^2}{2}\fallingdotseq200\\{n^2}\fallingdotseq400\\\ \ n\fallingdotseq20

とすれば、nのだいたいの値はすぐにわかります。

 

 

 

 

 

 

 

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written by k

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