日比谷高校のススメ

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【数学小話】中学校では教えてくれない数の性質③ -実際に問題を解いてみる-

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第三回はこれまでにやったことを実際に使って解く問題の紹介をします。

 

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まずは、第一回の冒頭でご紹介した問題。

第一回の問題

(1) 5で割ると1あまり、6で割ると2あまる自然数のうち、200に最も近いものを求めよ。

(2) 2つの自然数の最小公倍数は100で最大公約数は5である。そのような自然数の組み合わせとして考えられるものをすべて求めよ。

(筆者オリジナル問題)

 

(1) この手の問題は、条件に合う数をとりあえず2つ3つ見つけて、法則をつかむのがよいでしょう。

5で割ると1あまる数…1,6,11,16,21,26,31,36,41,46,51,56,61,71,...

6で割ると2あまる数...2,8,14,20,26,32,38,44,50,56,62,68,74,80,...

このように書き出してみると、条件に合うものは26,56などがあるようです。今回は、条件に合う数は5と6の最小公倍数である30ごとに登場します。

この手の問題は、かならず最小公倍数ごとに登場します。

(なぜ最小公倍数ごとに登場するかは、厳密に証明することは難しいかもしれませんがぜひ考えてみてください。ただ、直感的に「そういうものなのだ」と覚えてもらって構いません)

ということで答えは、26に30を足していって最も200に近いものになります。206

200÷30=6...20より、30の倍数では30×6=180が200に近いです。これに26を足すと206が得られます。明らかにこれが一番200に近いです。30の倍数では30×7=210のほうが200に近いですが、これに26を足すと236となって、200から離れてしまいます。

 

(2) 求める2つの数をA,Bとすると、最大公約数が5なので、A、Bどちらも5で割りきれます。そして、A、Bを5で割った商同士は互いに素でした。そこで、

A=5a、B=5bとします。

ここでaとbは互いに素であることに注意してください。

このとき、最小公倍数は100ですが、これは5abと等しくなります。

それはなぜか。第一回の表を思い出してください。84と120の最小公倍数と最大公約数はこうなります。

          84=   22  ×3    ×7 
       120=   23   ×3   ×5   
最大公約数 12=   22  ×3    
最小公倍数840=   23  ×3  ×5  ×7

最小公倍数は共通する素因数、最大公約数はすべての素因数から求まりました。AとBではこうなります。

          A=   5  ×a  
       B=   5    ×b
最大公約数 5=   5    
最小公倍数100=   5  ×a  ×b

 aとbは互いに素なので、一つ上の表の5と7のような役割を持ちます。

よって、5ab=100よりab=20。あとは、aとbが互いに素であることに気を付ければaとbの組がすべて見つかります。a<bとすれば、

(a,b)=(1,20),(4,5)

(2,10)はaとbが互いに素でないことに注意しましょう。

よって答えは(5,100)と(20,25)

 

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 もう1問見てみましょう。

整数問題(日比谷高校過去問)

n,a,b を自然数とする。
n を 6 で割ると商が a で余りが b,n を 8 で割ると商が b で余りが a であるとき,n の値を求めよ。

(日比谷高校、平成28年)

 問題文から作ることのできる式が2つありますね。

n=6a+b…①

n=8b+a…②

 

まずは模範解答例(の途中まで)を記します。

①と②から、

6a+b=8b+a

5a=7b...③

 

さて、ここまでの解答例(の一部)を見て、「なるほど、じゃあ答えはアレか」と分かる人と、「だから何?」という人に分かれると思います。(ほとんどの人が後者でしょう)

 

さて、なぜ大半の人がここから先に進めないか。それは、この2つの式のみをやりくりして問題を解こうとしているからです。

この2つの式のみをやりくりするだけでは、この問題は絶対に解けないです。

実は、「文字が複数登場する問題は、文字1つにつき式(条件)が1つあれば、すべての文字の値が1つに定まる」という法則があるのです。

つまり、今回文字が3つあるので、もう1つ条件を考える必要があります。

しかし、問題文のどこにももう条件は残っていません。このような問題は、「問題文に書かれる以前の条件」があるのです。

 

5a=7b...③

ここで、5と7は互いに素なので、aは7の倍数、bは5の倍数です。これはこのシリーズ第二回の重要な性質③でやりましたね。

隠されたあと1つの条件、それは「aは7以下、bは5以下」です。なぜなら、aは8で割ったあまりで、bは6で割ったあまりだからです。

そのため、結局a=7、b=5と確定します。

よってn=47

 

さて、この3つめの条件がひらめかなかったら解けないのか。そのようなことはありません。

5a=7b...③

③の式の時点で、aとbの組がたくさん作れるので、それぞれの組においてnの値を出してみればよいのです。

(a,b)=(7,5)のときn=47

47=6×7+5

47=8×5+7

(a,b)=(14,10)のときn=94

94=6×14+10

94=8×10+14

このように、nが47の倍数となるのです。

ここで、結局答えが47のみということに気づけば勝ちです。

 

問題の条件に合う数をとりあえずいくつか探してみる

数の性質に関する問題は、問題文にあるもののみで解かない

これらに気をつけて問題を解いてみてください。

 

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