【数学小話】中学校では教えてくれない数の性質② -互いに素と余りの関係-
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第二回は互いに素な数と、割り算の余りの関係についてご紹介します。前回と比べ、やや抽象的な話題が多いですが、非常に大切な事ですので、しっかり理解して貰いたいです。今回の内容を活用してどのように問題を解くかは次回以降に行います。
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- 復習 -互いに素-
- ① 互いに素でない2つの自然数も、それぞれを最大公約数で割った商同士は互いに素となる。
- ② 互いに素な2つの自然数をp,qとしたとき、pの倍数のうちqの倍数はq個おきに現れ、qの倍数のうちpの倍数はp個おきに現れる。
- ③(④の下準備) ap=bqであり、pとqが互いに素なとき、aはqの倍数で、bはpの倍数である。
- ④ p,qが互いに素なとき、p,2p,3p,…,(q-1)pをそれぞれqで割った余りは異なる
復習 -互いに素-
2つの自然数の最大公約数が1であることを互いに素といいます。
「素因数分解したとき、共通した素因数がないこと」と言い換えることができます。
さて、互いに素に関係した、大切な事項がいくつかあるので、ここで紹介しようと思います。
① 互いに素でない2つの自然数も、それぞれを最大公約数で割った商同士は互いに素となる。
例① 84と120は、最大公約数は12ですので、それぞれを12で割ってみると、
84 ÷ 12=7
120 ÷ 12=10
7と10は確かに互いに素となっています。
② 互いに素な2つの自然数をp,qとしたとき、pの倍数のうちqの倍数はq個おきに現れ、qの倍数のうちpの倍数はp個おきに現れる。
例② 3と5は互いに素です。3の倍数のうち5の倍数(つまり、5で割りきれる数のこと)は5個おきに現れ、5の倍数のうち3の倍数(つまり、3で割りきれる数のこと)は3個おきに現れます。
3の倍数 3 , 6 , 9 , 12 , 15 , 18 , 21 , 24 , 27 , 30 , …
5の倍数(つまり、5で割り切れるもの)は確かに5個おきに現れます。
3の倍数の書き方を少し変えてみると、直感的に納得がいくでしょう。
3の倍数 3×1 , 3×2 , 3×3 , 3×4 , 3×5 , 3×6 , 3×7 , 3×8 , 3×9 , 3×10 , …
3と5は互いに素なので、3の倍数のうち、5の倍数となるものは、3にかける数こそが5の倍数でなければならない、ということになるのです。
③(④の下準備) ap=bqであり、pとqが互いに素なとき、aはqの倍数で、bはpの倍数である。
文字で書いてあると非常に分かりにくいので、数字を用いて具体的に説明します。
互いに素な自然数として、pに2、qに3を使ってみましょう。
2a=3bという式があったとき、左辺の2aは明らかに2の倍数なので、右辺の3bも2の倍数でなければなりません。そうすると、2と3が互いに素であるから、b=2×○という形になっていないといけません。つまり、bが2の倍数だということです。
同じような考え方で、aは3の倍数だと分かります。
④ p,qが互いに素なとき、p,2p,3p,…,(q-1)pをそれぞれqで割った余りは異なる
これも数字を用いて説明します。
互いに素な自然数として、pに4、qに5を使ってみましょう。
4の倍数 | 4×1 | 4×2 | 4×3 | 4×4 |
---|---|---|---|---|
4 | 8 | 12 | 16 | |
5で割った余り | 4 | 3 | 2 | 1 |
5の倍数 | 5×1 | 5×2 | 5×3 |
---|---|---|---|
5 | 10 | 15 | |
4で割った余り | 1 | 2 | 3 |
確かに、余りが全て異なる様子が見て取れます。
これを証明してみましょう。(この証明は高校で習うものなので、中学生は覚えなくて構いません。ただ、余りが異なるという事実は覚えておきましょう。)
(証明)
もし、p,2p,3p,…,(q-1)pの中でqで割った余りが同じものがあったと仮定するもの。
そのうち2つをap,bpとおく。(ただしa>bとする)
このときap-bp=(a-b)pであり、qで割った余りが同じ者同士の差であるから、(a-b)pはqで割り切れる。
ここで、pとqは互いに素なので、(a-b)pがqで割り切れるなら、(a-b)がqで割り切れるということとなる。
ところが、aとbは1から(q-1)のいずれかであり、(a-b)はq未満である。しかしこれは(a-b)がqで割り切れるということと矛盾する。
つまり、余りが同じものはない。(証明終了)
ということで、互いに素な自然数は、それぞれの倍数に特徴があることが分かりました。次回はこれらの知識を使いつつ、具体的な問題を解いてみましょう。
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written by k