中学生でも解ける大学入試数学9★★ 1970年東大
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1970年。非常に昔の問題です。なんと、完全に中学生までの知識で解くことができます。また、問題文に高校以上の単語が出現することもありません。
このような図形に対する大事な感覚を見る問題は一度はやるべきです。
問題
★★
A(0,1),B(0,11)がある。x軸上の正の部分に点P(x,0)をとり、∠APBの大きさが30度以上にしたい。xの範囲を求めよ。
ヒント、着眼点
Pを原点から出発し、x軸の正の方向に動かしていったときの∠APBの大きさがどのように変化するかを想像してみましょう。
x座標が1,2,3,...と増加するとき、はじめは角度が大きくなっていきますが、ある時を境に小さくなっていきます。x座標が10,20,30,...と非常に大きくなってくると、どこまでも角度が小さくなっていくようです。
そしたら30度となる場所をうまく見つけてみましょう。
以下、解答
解答
5√3-8≦x≦5√3+8
解説
もはやコンパスと定規で答えの範囲を作図することすらできます。
手順は以下の通り。
①ABを1辺とする正三角形を図のように書く。
②正三角形のABでないのこり1つの頂点をOとし、Oを中心として半径OAの円を書く。
③x軸上の、円Oとの交点2つの間の範囲が求める答え。
なぜそのやり方でよいかというと、円の中心角と円周角の関係により、弧ABの円周角が30°となるからです。
また、「ヒント、着眼点」ですこし触れましたが、Pが30°となる地点の間にあるときは30°以上となるのです。
ここで、教科書などに書かれていませんが、円周角の定理に関連して知っておきたい大切な事実があります。
固定された円周上の2点に対してもう1つの点をとる位置が円周上か、円周内か、円周外かで角度の大小がきまるのです。 円周内であればどこでも円周角より大きくなりますし、円周外であればどこにとっても円周角より小さくなります。(ただし、固定された2点を結ぶ直線に対し同じ側である必要があります。)
この考えを理解すれば、上で述べた作図の解法に納得がいくと思います。
xの範囲の数値の求め方は以下の通り。
①Oの座標は、正三角形が1辺10(=AB)であるので、(5√3,6)
②OP=10より、三平方の定理から、(5√3-x)2+62=102
③これを解いて、x=5√3±8。
④このxがちょうど30°となる時なので、答えは5√3-8<=x<=5√3+8
別解:余弦定理を使った解き方(高校生向け)
余弦定理より、
AB2=AP2+BP2-2AB×BPcos∠APB
AB=10,AP=√(x2+1),BP=√(x2+121)を代入してcos∠APBを左辺に持ってくると、
cos∠APB=(x2+11)/√{3(x2+1)(x2+121)}
30°以上なので、(右辺)≦√3/2となり、この不等式を解くと 5√3-8≦x≦5√3+8
高校で習う公式を使って問題を解くと 非常に計算が難しくなり、賢い方法を見つけると簡単に解ける、そんな問題でした。
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中学生でも解ける大学入試数学8 2000年阪大 - 日比谷高校のススメ
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written by k