中学生でも解ける大学入試数学2★★ 2005年東大
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第2回も東大です。東大2005年共通問題(一部改題)です。
問題
★★
3以上9999以下の奇数aで、a2-aが10000で割り切れるものを1つ求めよ。
ヒント、着眼点
本来の問題は「すべて求めよ」ですが、実は答えが1つしかありません。入試本番においては、答えがその1つしかないことを説明する必要がありますが、それは中学生までの知識では難しいので、とりあえず1つ見つければよい、という問題に変えました。
前回同様、3から9999のすべての奇数を実際に計算してみる方法は現実的な時間内で終了しません。よって、さまざまな考察をすることで大部分の数は答えとなる候補から外す必要があります。ある程度絞れたら、(つまり、現実的な時間で計算が終了しそうな個数に絞れたら、)あとはしっかり計算するなりしてみるなどがよいでしょう。
絞るヒント
a2-a=a(a-1)と因数分解できますよね。これが10000(=2×2×2×2×5×5×5×5)の倍数ですから、aとa-1をそれぞれ素因数分解すると、素因数2と5がどちらも少なくとも合計で4つあるということになります。では、aとa-1に素因数2、5をいくつずつ振り分けるのかを考えてみましょう。
そもそもaは奇数なので、aに素因数2は1つも振り分けられないことが分かります。
そうすると、逆にa-1は素因数2を4つ以上もつことになります。
この時点で大半が絞れました。
答えとなるaの候補は、a-1が16の倍数であるようなa
他にも絞る方法はないでしょうか。
以下、解答
解答
a2-a=a(a-1)、10000=2×2×2×2×5×5×5×5
a2-aが10000で割り切れ、aは奇数、a-1は偶数、
aとa-1は互いに素なので、整数k,lを用いて、
a-1=2×2×2×2×k=16k...①
a=5×5×5×5×l=625l...②
と表すことができる。(kは5と互いに素な整数であり、lは奇数)
①よりa=16k+1。これと②より、
16k+1=625l
625l-16k=1...③
③を満たすk,lの組を見つけたい。ここで、625÷16=39...1より、
625×1-16×39=1つまり、(k,l)=(39,1)は③の1つの解。
このk,lは(kは5と互いに素な整数であり、lは奇数)という条件を満たしているから、②に代入して、
a=625が答え。
(a=625のときa(a-1)=390000)
解説
①と②の式が出たことで、答えとなるaは、aが625の倍数かつa-1が16の倍数であるような数だと分かります。そこまで絞れたらあとはそのような数を実際に見つければよいのです。625×1~625×16の中に必ず条件を満たすものはあるので、最悪16回計算すれば答えが出ます。ちなみに、条件を満たす数は、625と16の最小公倍数である10000おきにしか登場しないので、結局答えは1つしかないのです。
発展
a(a-1)と因数分解して、aとa-1は互いに素としていますが、なぜそうなのかの証明をしておきます。これは高校で習う内容であり、大学受験に必要な知識です。
(証明)
aとa-1の最大公約数をGとする。aもa-1も当然Gで割り切れるので、それぞれGで割った商をx,yとする。a>a-1なのでx>yである。
a=Gx
a-1=Gy
この2式について、(第1式)-(第2式)と引き算すると、
a-(a-1)=Gx-Gy
1=G(x-y)
Gもx-yも自然数なので、G=1,x-y=1。G=1は最大公約数が1であることを意味するから、aとa-1は互いに素である。
もう一つ。
a>bのとき、a,bの公約数は、a-bにとっての公約数でもあります。
つまり、a-b=1なら、aとbの公約数は1しかありえないわけです。
a-b=3なら、aとbの公約数は1か3しかありえません。
これもユークリッドの互除法というもののもととなる考えで、高校で習います。
前回
中学生でも解ける大学入試数学1 2007年東大 - 日比谷高校のススメ
次回
中学生でも解ける大学入試数学3 1993年東大 - 日比谷高校のススメ
written by k