【数学小話】数の歴史① 自然数の発明
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塾講師のバイトで中学生の教え子に次のようなことを言われました。
「虚数ってないんですか?そんなものを習う必要があるんですか?」
この中学生は虚数という言葉と、2乗したら-1になるということは知っているものの、具体的にどのように四則演算されるか、どう使うかは知らなかったようですが、虚数を習った高校生以上の人であっても同様の疑問を持つ人は少なくないでしょう。
今回は、「なぜ虚数は『存在しない』というイメージがあるのか」についての考察を述べるためにも、虚数はどのようにして生まれたのかを解説します。
そして、虚数がどのように生まれたかを解説するためには、そもそも人類はどのように数を生み出してきたかを話す必要があります。今回は自然数が生まれるまでについて語ります。
ここからは猿人も原人も旧人類も新人類も全て人類と呼びます。
まずは人類が数を数え始めたころ。火を発見し、人類が洞穴で狩猟をして生活していた頃を思い浮かべてください。
当時は生きるのに必要な分しか数を数えませんでした。今日狩った動物が1匹2匹など。
とある民族では数を数える時、「ひとつ、ふたつ、たくさん」と数えるそうです。3つ以上多いものはそれがいくつか詳細に数えなくても何ら生活に支障をきたさないのです。このように大昔の人類は片手で数えられる程度の数さえ数えられればそれでよかったのです。
さて、人類の知能が向上し、生活様式が進歩するにつれて、より多くの数を数え、把握する必要が出てきました。
古来より人は何かを測量するとき、自分自身の体を「ものさし」にしました。今でも使われている「フィート」という長さの単位は、もともとは人類の足の長さが基準となっていて、「foot,feet」からきています。他にも、「ヤード」「インチ」なども体の一部などが基準となっていた長さの単位です。
さて、数を数えるときに、体のどこを使ったかというと、指です。正確には手の指です。今の私たちも指を折って数えますよね。これはおそらく長い長い人類の歴史で受け継がれてきた数を数える方法なのでしょう。両手合わせて指が10本あります。これによって人類は大きな数(といっても、せいぜい3桁行かない程度でしょうけど)を数える時に、10をひとまとまりとして数えるようになります。10のひとまとまりを10集めれば100になります。さらに10集めて1000ができます。
紀元前3000~1000年ごろのエジプトでは実際に10進法が用いられており、1,10,100,...を表す文字があり、以下のようにあらわされました。
1,10,100は単純な直線や曲線、1000はハスの花、10000は指、100000はカエル、1000000は神様が、それぞれもととなっています。
23827を描こうとすると、それぞれの位の数字の分だけ同じ絵を描く必要があります。
このようにして、どんなに大きな数も数えられるようになりました。
この記数法には欠点があります。それは「9999みたいな数を書くときに広いスペースが必要になる」ということです。
この欠点を解決したのが、紀元前200年以降、インドで発明された数字、位取り記数法です。
例えばエジプトでは78を表すのに10を意味する絵7つ、1を意味する絵を8つ並べる手法をとりました。それがインドでようやく「78」と書くようになったのです。1から9までをそれぞれ違う記号で書くことにしました。これが数字のことです。ただ、今の数字とは微妙に形状がことなる記号を用いていたそうですが。位取り記数法というのは、「1がいくつあるか、10がいくつあるか、100がいくつあるか、1000が...」というのを順番に数字に書き下したもあのです。つまり、今の私達の数の書きかたが位取り記数法です。
インドでは数字、位取り記数法だけでなく、「0」も発明しました。
正確には位取り記数法で、その位には何もないことを意味するために0も一緒に発明された、というのが正しいでしょう。ただ同じ絵の数を数えるだけだと、3019と319が同じ数としてあらわされてしまいます。これらを区別するためにも0が必要だったのです。
位取り記数法と0123456789の数字のおかげでさまざまな数を少ないスペースで記すことができ、それにより人類がより数そのものを研究しやすくなりました。
ここまでが自然数の発明の歴史です。
軽くまとめると、
「人類が生活する上でものの個数を数える必要が生じ、そのために数を記す方法として1や10、100を表す記号が生み出され、その記号を複数組み合わせていたが、やがて数字と位取り記数法が生み出された」
といったところでしょうか。
次回は有理数、無理数の歴史を、ピタゴラス、ユークリッドなどに触れながら解説するよていです。
written by k