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【数学小話】対偶を考えると便利

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周りの迷惑になりますので電車内での通話はご遠慮ください

という言葉に対して、

じゃあ周りの迷惑にならないなら通話してもいいのか

といういちゃもんをつける人、いますよね。実はこれ、数学的にこのようないちゃもんは全く意味をなさないと断定できます。

 

このように世の中では、一見正しいかどうか一概には言えないものが数多く存在しますが、数学でそれは正しいかどうか判断できるようになります。

 

 

高校1年の数学1で習う命題。ここで習う「対偶」という考え方を使えば、これらのあいまいないちゃもんに対してうまく切り込むことができます。

今回は中学生以下に向けた説明なので、極力高校数学の用語は減らしていきます。

 

まずは命題や対偶の説明をします。

 

命題

それが(客観的に)正しいか正しくないかが決まる条件、文章。

 

対偶

「pならばq」という命題に対し、「qでないならばpでない」という命題を、もとの命題の対偶という。

 

すこしややこしいので例を使って解説します。

 

「1は自然数」は命題。この命題は正しい。

「10000000は大きい数」は正しいか一概に判断できない(主観が混じる)ので命題ではない。

命題というのは、客観的に、論理的に正しいか正しくないかのどちらか一方に決まるものでなければなりません。

 

 

「x>0ならばx+10>0」を命題Aとする。これは正しい。

「x+10≦0ならばx≦0」は命題Aの対偶。これは正しい。

対偶は、もとの命題の位置を前後ひっくり返して意味もひっくり返すイメージです。 

 

一般に、命題とその対偶は真偽が一致します。

さて、最初に紹介したいちゃもんを分析します。

 

周りの迷惑になりますので電車内での通話はご遠慮ください

これは命題っぽく言い換えると、

周りの迷惑になるならば電車で通話をすべきではない

といったところでしょうか。これは正しいとしてもよいでしょう。

これの対偶をとると、

電車で通話をしてもよいならば周りの迷惑でない

元の命題が正しいなら、この対偶も正しいといえます。

さて、あのいちゃもんはどうなるのでしょうか。

 

周りの迷惑にならないなら通話してもよい

 これは命題の対偶ではありません。実はこれは命題の裏にあたります。

 

「pならばq」に対し、「pでないならばqでない」を命題の裏といいます。

 一般に、命題とその裏の真偽は必ずしも一致しないです。

 よってこのいちゃもんは命題の裏にあたるので、いくら命題が正しいとはいえ、その指摘は必ずしも正しいとは限らないのです。よってこの指摘は意味を成しません。

 

 

命題と裏の例を示しておきます。

命題「ここが東京ならばここは地球上

裏「ここが東京でないならばここは地球上でない

命題は正しいですが、裏は正しくないです。東京以外に地球上となる場所は存在します。

 

命題「今2時ならば2時間後は4時

裏「今2時でないならば2時間後は4時でない

 命題も裏も正しいです。命題と裏の真偽は同じになる場合も異なる場合もあるということを意味します。

 

 さて、このような対偶の視点を持つと、世の中に正しくない(あくまで数学的に、論理的に正しくないという意味です)文章がたくさんみつかります。

 

食卓にある

これはキューピーのキャッチコピーですが、対偶をとると、

食卓にないなら愛ではない

食卓にないどんなものも愛ではない別のなにかである、という意味になります。これは正しいでしょうか。

食卓に存在しないが別の場所には存在する愛は存在しますよね。(ややこしいですね)

ということで対偶が正しくないのでもとの命題も正しくないです。よって「愛は食卓にあるとは限りません」。

 

飛べない豚ただの豚だ

ジブリ紅の豚の名セリフです。対偶をとると、

ただの豚でないならば飛べる豚である

ただの豚でない豚はもれなく全て飛べるという意味になりますが、これも正しくない。対偶が正しくないので、もとの命題も正しくないです。ということは、このジブリの名言、一瞬「おお、かっこいい」となるかもしれませんが、よくよく考えると、数学的に間違ったことをいっているのです。

 

お客様神様だ

接客業などでたまに聞く言葉ですが、対偶をとると、

神様でないならば客ではない

どこか排他的ですね。

実際、「お客様は神様だ」はお客様のことを神様であるかのように大切に、ていねいにもてなしなさいという意味の言葉ですから、

お客様神様のように扱え

これの対偶は、

神様のように扱われない者なら客ではない

もしあなたがお店で雑な扱いを受けた場合、客としてみなされていない可能性を考慮した方がよさそうです。

 

 

さて、いままで見てきた対偶。これが数学でどのように使われているかを最後にご紹介します。

 

問題

「整数a,bについて、abが偶数ならばa,b少なくとも1つは偶数である」を示せ。

 

解答

対偶を考える。対偶は、

「整数a,bについて、a,bがどちらも奇数ならばabは奇数である」

奇数と奇数の積は奇数なので成り立つ。

よってもとの命題も成り立つ。

 

※「a,b少なくとも1つが偶数」の意味をひっくり返すと、「a,bどちらも奇数」です。「a,b少なくとも1つが奇数」ではありません。

そもそもa,bの偶奇のパターンは以下の全4パターンです。

 a b

偶 偶

偶 奇

奇 偶

奇 奇

「a,b少なくとも1つが偶数」であるとき、以下の3パターンがありえます。

 a b

偶 偶

偶 奇

奇 偶

よってこれの意味をひっくり返すことは、全4パターンのうち上に挙げた3パターンを除く残り1パターンのみを選ぶという意味です。よって

 a b

奇 奇

「a,bどちらも奇数」

が正しいです。

 

 

今回は以上となります。皆さんも街中でそれっぽい文章を見たときに対偶を考えて「この文章は正しくないな」と突っ込むようにしましょう。

 

 

 

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