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【数学小話】3×4と4×3は違うのか① 順序を守る意味

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snsやメディアでかつてある話が話題になりました。だいたい次のような内容でした。

とある小学校の算数のテストで、「3人にみかんを4個づつ配ります。全部で何個必要ですか。」という問題に対し、「3×4=12   答え.12個」としたところ不正解とされた。

正しい答えは「4×3=12 答え.12個」だった。これはおかしいのではないか。

 これに対し、ネットでは「答えがあっているんだし掛け算の順序は気にしなくていいだろう」「3×4のみを正解とすべきだ」などの意見がしばしばみられました。このことに対し、皆さんはどう思いますか。

 

今回は、大学で数学を専攻している筆者が自分なりにこの「掛け算の順序問題」に対する見解を述べていきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

結論は、

このことについて我々があれこれ言うのはバカバカしい

です。

そのような言い方はないだろ、と思う方がいると思うので、順序を気を付けるべきかそうでないかと問われたら、「どちらかといえば順序に気を付けた方がよい」と一応答える、とだけ言わせていただきます。

 

まず、誤解のないように先に言わせていただきますが、私たち(小学校で掛け算をとっくに習った人)が日常生活で掛け算の順序について口を酸っぱくして指摘するのは大きなお世話です。そんなことに気を配る暇があったらもっと別の事をやりましょう。

ここでいう「順序に気を付けないとダメ」というのは、現在小学校で掛け算を習っている人たちに向けた言葉です。

 

さて、私たちは掛け算の順序を入れ替えても同じ値になるという性質は当然しっています。高校の数学の教科書にも「積の交換法則 ab=ba」などと書かれていることもあります。よって順番はどちらでもいいだろうという意見を持つ人が多いかと思います。ですが、今回はそのような問題ではないと考えます。

今回の「掛け算の順序問題」は、入れ替えてもよいだろうという数学(算数)の法則上の問題ではなく、小学校の教え方の問題です。

 

 

小学校の算数の授業で掛け算を教えるとき、先生がどのように掛け算を教えるかというと、

「一つ分の数×いくつ分=全部の数」

と教えます。算数の教科書にもそう書いてあります。(Wikipediaより)

筆者が小学生の時は、先生に「掛けられる数×掛ける数」と言われました。要するに、掛けるの記号の前に一つ分、後に個数を持ってくる、ということです。これをもとに先ほどの問題を考えると、

「3人にみかんを4個づつ配ります。全部で何個必要ですか。」という問題に対し、「3×4=12」ではなく「4×3=12」とした方が正しい(より妥当である)ことになります。

 

「じゃあその順番じゃないと怒られるのか」、と言われれば、「それば場合による」と言わざるを得ません。

学校の先生が、もし「この順番の通りにしないとだめですよ」とおっしゃった場合はテストで順番を逆にしてバツにされても文句は言えないでしょう。これは答えがあっているからいいだろということではなく、先生の言っていたことを守らなかったという意味で咎められかねないのです。先生が「こういうルールで掛け算をやろうね」と言っているのだから、そのルールを守ればよいだけの話です。

また、先生が、「本当はこの順番が正しい順番だって教科書にも書いてあるけど、掛け算は順序を入れ替えても同じ数字がでてくるし、日常生活で順序が逆になっても一切困ることがないから、みんなはテストで好きな順番で書いていいよ。」とおしゃったときは順序はどちらでもよいことになります。

 

どちらの教え方になるのかは現場の先生方の判断により異なります。なので、テストで順序が違って不正解とされたとしたら、まずその学校の先生に「順序を守らないといけないという風に生徒に教えたかどうか」を確認すべきです。もし「順序を守るように教えています」と先生が答えたら、それは話を聞かなかった小学生が悪いことになり、「順序については何も言っていません」と答えたら、それは先生が悪いことになります。そのような確認も取らず、「掛け算は順序によらず答えが同じになるから不正解にするのはおかしい」などと批判するのは、先生が順序に関して生徒に何も言っていないという仮定での批判になるのであまり意味がありません。また、これは小学校の教え方に関する問題なので、「数学の法則で掛け算の順序を入れ替えても同じ値になるのは保証されているのだ」といった批判は見当違いも甚だしいと言わざるを得ません。

 

 

 

さて、「まあ順番はどっちでもいいよ」と教えられた生徒にはある問題が生じる可能性があります。「学校のテストでは順序を気にしなくても正解だったが、外部のテストで順番を適当にしたら不正解にされて混乱する」といったことが起こりえます。外部のテストというのは、ある程度採点が自動化されていたり、用意された模範解答以外すべて機械的バツにする、といったことがありえるからです。

このような問題を回避するには、小学生自身が、学校内部のテストと外部のテストの違いを理解したり、外部のテストを受けるときに即座に正しい順序を思い出せるか、といった少々小学生にとっては厳しいかもしれない試練を乗り越えなければいけません。先生の話をしっかり聞き、「そうか、順序が適当でいいのはこの教室だけのローカルルールだと思えばいいのか」というような物分かりのいい子は後者の教え方で成長しますが、そういう考え方がうまくできない小学生は混乱するだけです。こればっかりはどうしようもありません。

 

 

ということで、まとめます。

学校の授業で「掛け算の順序にはちゃんと意味があって、その順番を守るべきだ」と教えられたならその通りにしないで不正解にされても文句は言うべきでない。そのようなことを言わずにいきなり不正解にされたのであれば教師側の責任である。

そもそもこれは数学の法則の問題ではなく小学校の教え方の問題なので、当事者以外があれこれ言ってもしょうがない。

 

ということです。

 

 

 

せっかくの機会ですので、次回はこの「掛け算の順序問題」は完全に忘れて、「実は掛け算の順序を逆にしてはいけない場合がある」ということについてお話しようと思います。

 

 

hibiyastudy.hatenablog.com

 

 

written by k

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