【数学小話】格子点を数える問題の解法研究
↓ここからカテゴリー別に記事を見ることができます。↓
数Bの数列の単元で登場するやや難しめの問題として、格子点の個数を求める問題があります。このタイプの問題の解法を研究してみます。
問題
を自然数とする。 を満たす整数の組 の個数は、
である。
n=2の場合の図を用意しました。問題の不等式はすべて=がついていないので、この青の三角形の内部(周を含まない)にある格子点の個数を求めることになります。
今日はこの問題を複数の解法で求めます。問題によって不等号に=が入っていたり入っていなかったりしますが、基本的な考え方はどれも同じです。
解法①xまたはyを固定する
xを固定するときは、x=aという直線上に格子点がいくつあるかをaで表し、aについて和をとります。yを固定するときも同様。今回はyを固定して解いてみます。
y=1という直線上にある三角形内の格子点の個数はいくつか
y=2という直線上にある三角形内の格子点の個数はいくつか
y=3という直線上にある三角形内の格子点の個数はいくつか
…
y=3n-1という直線上にある三角形内の格子点の個数はいくつか
というのをそれぞれ数え上げ、和をとればよい、という考え方です。一般に、
y=aという直線上にある三角形内の格子点の個数をN(a)と書くことにし、N(a)をaで表します。
y=aを固定したとき、N(a)は、
を満たす整数xの個数となるので、
(y=aと固定されているので はに変わる)
a=3m-2のときN(a)=4n-4m+2
a=3m-1のときN(a)=4n-4m+1
a=3mのときN(a)=4n-4m-1
と表すことができるので、aを1から3n-1まで動かしたときの和が求める答えなので、
利点
領域の形状にかかわらずできる(領域の境界が放物線などでもよい)
欠点
aの値によって場合分けをするのが面倒、シグマの計算の回数も増えがち
解法②長方形内にある格子点の半分
求める格子点の個数は、 が表す長方形内にある格子点の(ほぼ)半分であることを用いて出します。
領域の境界上の格子点も数えるような問題なら、それに応じて適切な長方形を考えればOK。
n=2の図で説明します。nの値がもっと大きいときの図は脳内で補完してください。
このオレンジの長方形内にある格子点の個数は、 個です。ここで、直線 上にある格子点が 個(この図における赤い点)あるので、これを引くと残りは 個。これのちょうど半分が求める個数です。なので、
かなりエレガントな解き方でオススメです。
利点
計算量が少ない
欠点
領域の境界が放物線だとうまくいかない
解法③nを1増やしたときの格子点の増加に注目する
求める数をS(n)と置いたときに、S(n+1)とS(n)の差をnで表します。これができたら階差数列から一般項を求める問題の要領でS(n)が求まります。
①まず、n=1のときの図を自分で書いて点を数えれば、S(1)=3はすぐに求まります。
②次に、S(n+1)-S(n)を求めます。そのためにnとn+1のグラフを比較します。
S(n)で数える格子点を覆う三角形が、S(n+1)の図の左上隅にすっぽり入ることを考えると、新たに増える点はy座標が1から3までの格子点です。この個数を左の列から順に数えていくと、
縦に3個並ぶ点が4n-1列
縦に2個並ぶ点が2列
一番右に点が1つ
あるので、計12n+2個です。したがって、階差数列の考え方で、
のとき、
利点
特になし、しいて言えば階差数列の計算練習になる
欠点
領域が単純な形でないとうまくいかない(かも)
解法④ズル?穴埋めであることを悪用
この問題はたまたま穴埋めであること、過程はどうでもよいから答えの数字さえ当たればよい、という場合にのみ使ってもよい方法。
答えが
と、nの2次式で書けることが分かっているので、n=1,2,3のときの点の個数を実際に書くなどして求めておいて、その値に合うようにア、イ、ウの値を決めます。
n=1,2,3を(実際にグラフを書くなどして頑張って)求めてみると、
n=1のとき、3個
n=2のとき、17個
n=3のとき、42個
となるので、これで連立方程式
を作って (ア,イ,ウ)=(6,4,1) と求まります。
センター試験やマークシート問題など、答えさえ出ればよい問題ならこのようにいくつかの具体例の結果から「問題文の答えの式に合致するのはこれしかない」とする方法です。
利点
詳しいことが分からなくても答えを楽に出せる
欠点
センター試験やマークシート問題など、限られた場面でしか使えない
written by k