【数学小話】n次方程式の解と係数の関係
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高校受験でやや発展的な内容として扱われるものとして、解と係数の関係があります。少し難易度の高い私立高校では受験問題でその知識が要求されることがあります。公立高校の受験ではめったに出題されないテーマですが、今回はこのことについての記事です。後ろ半分は高校以上の、しかもかなり難しい内容なので後半は飛ばしてもらって構いません。
高校受験における解と係数の関係
高校受験で見かける解と係数の関係は、以下のようなものです。
の方程式 の2つの解を とすると、
・例題
の2つの解を とする。 の値を求めよ。
・解答
与えられた方程式は と変形できるので、解と係数の関係より、である。
このように解くことができます。
※注意①
実際に方程式の解を求めて、そのまま代入してももちろん解けますが、面倒です。
※注意②
与えられた方程式の の係数が1でないときは、両辺をその係数で割って、 の係数を1にすればよいです。
参考書などによっては、このように書かれている場合もあります。
の2つの解を とすると、
もちろんこちらも正しいです。この記事では分数が多くなるのを避けるために、あらかじめ先頭の項の係数で式全体を割って、先頭の項の係数を1にした状態を見ていきます。
導出
2次方程式の解と係数の関係は直接計算しても、因数分解を利用しても示すことができます。
直接代入して示す
の2つの解を とすると、 となる。
因数分解を利用して示す
の解が
であることから、
と因数分解されるはずである。右辺を展開してについて整理すると、
つまり
この両辺の係数を比較すると、
つまり
3次方程式の解と係数の関係
高校数学でも解と係数の関係を習います。2次方程式の解と係数の関係に加え、3次方程式の解と係数の関係も学習します。
の方程式 の3つの解を とすると、
・例題(ちょっと難しい)
の3つの解を とする。 の値を求めよ。
・解答
解と係数の関係より、である。また、
という有名な等式がある。
これらを①に代入して、
よって、
この等式はややハイレベルな大学入試で見るので覚えましょう。
導出
3次方程式の解の公式はありますが、非常に複雑なので、因数分解を利用した導出を示します。
因数分解を利用して示す
の解が であることから、
4次方程式の解と係数の関係
導出は書きませんが、結果だけを書きます。
の方程式 の4つの解を とすると、
ここまでを見て、法則に気づきましたか?
4つの解から1つずつ選んだ全ての和が-a
4つの解から2つ選んでかけて作れるもの全ての和がb
4つの解から3つ選んでかけて作れるもの全ての和が-c
4つの解から4つ選んでかけて作れるもの全て(当然1つしかない)の和がd
解から選ぶ個数が順に増えつつ、符号が交互に入れ替わるようになっています。
このルールが2次方程式、3次方程式の解と係数の関係でも成り立っています。
の方程式 の3つの解を とすると、
3つの解から1つずつ選んだ全ての和が-a
3つの解から2つ選んでかけて作れるもの全ての和がb
3つの解から3つ選んでかけて作れるもの全て(当然1つしかない)の和が-c
の方程式 の2つの解を とすると、
2つの解から1つずつ選んだ全ての和が-a
2つの解から2つ選んでかけて作れるもの全ての和がb
n次方程式の解と係数の関係
一般のn次方程式における解と係数の関係を記しておきます。記号が難解ですが、意味が分かれば思いのほかシンプル?
※高校2年以上向け
の方程式 のn個の解を とすると、
非常に分かりづらいですが、しっかり書くと上の通りになります。順番に見てみます。
n個の解から1つずつ選んだ全ての和がxn-1の係数になる。
n個の解から2つ選んでかけて作れるもの全ての和がxn-2の係数になる。
n個の解から3つ選んでかけて作れるもの全ての和がxn-3の係数になる。
以下同様に続き、
n個の解から(n-1)個を選んでかけて作れるもの全ての和がxの係数になる。
n個の解からn個を選んでかけて作れるもの全ての和が定数項になる。
となります。
この導出は、やはり因数分解の展開を利用します。
これを展開してxの降べきの順に整理すると、
となります。あとは各xi (1≦i≦n) の係数同士を比較すれば、先ほどの関係が得られます。
written by k