【数学小話】なるべく大きな数を作りたい!
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算数、数学が好きな人であれば(おそらく)だれもが考えること、
とにかく大きな数を作りたい!!!
数を大きくするのにどんな方法があるのか、どうすれば手っ取り早く数を大きくできるか、を考えてみましょう。そのために、まずは頭の体操をしてみましょう。
頭の体操
3つの3でなるべく大きな数を作れ。
基本ルール
・使ってよい数字は3つの3のみ。
・なるべくシンプルな表現にする。
・2つの3を33として使ったり、3つの3を333として使ってはいけない。
・足し算、掛け算
3+3+3=9
3×3×3=27
この時点では一番大きいのは27。足し算よりも掛け算のほうが、より速く数を大きくできます。
・指数
中学生までで習うものに、「指数」があります。aをb回かけたものを「aのb乗」といい、 と書きます。このaの右肩にのせる数字を「指数」といいます。
これでただの掛け算よりはやく数を大きくできます。よって、
おそらくこれが現時点で一番大きいでしょう。
※これは、「3の(3の3乗)乗」であって、「(3の3乗)の3乗」ではありません。 言葉でみると分かりにくいですね。つまり、
はであって、ではない
ということは注意してください。指数が連なる場合は、上から順に処理するのが計算のルールです。
正しく上から計算すると、
下から計算すると、
かたや13桁、かたや5桁。わずかな表記の違いでかなり差がでます。
ということで、今回の頭の体操の答えとしては、 が考えられます。
7兆6255億9748万4987。たった3つの3を斜めにかくだけでこんなに大きな数ができました。
初等関数の範囲であればこれが一番大きいでしょう。
※初等関数...高校までに登場する関数全般だとおもってください。
今回、大きな数を作る、という試みをしましたが、数学には途方もなく大きな数を考える分野があります。その世界では7兆なんて1粒の砂ほどの存在になります。では、中学、高校では絶対に習わない世界をのぞいてみましょう。
巨大数の世界の入り口
ここからは、具体的に桁数すらわからないような、宇宙に存在する原子数よりも大きいような、途方もないくらい大きい数をどうやって作るかを見ていきます。そして、巨大数の中ではよく知られているグラハム数がどのように作られるのかをみていきます。
テトレーション
指数をさらに強くしたようなものとして、「テトレーション」があります。定義は以下の通り。
要するに、aの右上にaをのせ、その右上にaをのせ、...とaが合計b個になるまで繰り返したものになります。ちなみに、この右辺ような表記は「指数タワー」と言われています。
この表記を使えば、先ほどの頭の体操の答えは、
このように、2つの3で表すことができます。ということは、このように表記すれば、3つの3で、先ほどの頭の体操の答えよりもっと大きな数ができます。
これは、3の指数タワーを 個積み上げたもの、という意味になります。もうこの時点で途方もないくらい大きな数になります。具体的に何桁の数か当てるのも非常に困難です。7兆段を考える前に、4段、5段がいくつくらいかを見てみます。。
3を4段積んだタワーは3638334640025桁の数になります。
この時点で無量大数を超えています。無量大数は つまり69桁なので、すでに桁数では圧倒的な差がついています。
3を5段積んだタワーは、だいたい 桁の数です。もうこの時点でわけわかりません。
段数を増やして7625597484987段積んだものが になります。桁数もまともにわかりません。たった3つの3だけで具体的に想像できないくらい大きな数になりました。
記号を一切使わない表記のなかでは、おそらくこれが最も大きな数になるでしょう。
クヌーヌの矢印表記
巨大数を表すものとして有名なもので、クヌーヌの矢印表記というものがあります。
矢印1つは、累乗を表します。
矢印2つはテトレーションと等しくなります。以後、矢印が1つ増えるごとに、このような帰納的な動きをします。矢印がn個並ぶものをと書きます。
ややこしいので具体例を見てみます。
であるから、
これは先ほどの3つの3で作れる一番大きな数 より大きい数になりました。矢印の計算も右から順に処理します。
もう一つ矢印を増やすと、
これは、3を3段積んだ指数タワーをつくり、その値の分だけ3を積んだ指数タワーをつくり、その値の分だけ3を積んだ指数タワーをつくり...ということを 回くりかえす、ということになります。
この時点で を銀河系としたら は米粒よりも小さい存在になるでしょう。
まだ終わりません。さらに、
とします。今考えた はとなります。
ここで、矢印を 個用意したもの、
を考えます。これを とします。以降、矢印を個用意したもの、
を として、 を帰納的に決めていきます。そうして、64回繰り返したもの、
を、グラハム数と言います。この数は、数学の証明で使われた最大の数としてギネスブックに登録されています。
こんな巨大な数がどこに登場したかというと、1970年にグラハムとロスチャイルドが証明した「グラハムの定理」に関して登場します。この定理の内容は、
n 次元超立方体の 個の頂点のそれぞれを互いに全て線で結ぶ。次に2つの色を用いて連結した線をいずれかの色に塗り分ける。
このとき n が十分大きければ、どんな塗り方をしても、同一平面上にある四点でそれらを結ぶ線が全て同一の色であるものが存在する。
というものです。とても難しそうなことを言っているということだけはわかりますね。
超立方体というのは、2次元、3次元での正方形、立方体を一般次元に拡張したものをいいます。2次元では正方形は頂点が4つ必要、3次元では立方体は頂点が8つ必要です。このルールでいけば4次元での立方体にあたるもの(4次元以上での"立方体"にあたるものが超立方体と名付けられました)は頂点が 個必要でしょう。さらに、n次元では頂点が 個必要です。
この定理内の「nが十分大きければ」に関して、「nがいくつより大きければ常に成り立つのか」という問に対して、グラハム数以上のnなら常に成り立つということがグラハムによって証明されました。これがグラハム数のルーツです。*1
ということで長くなりましたが、一番有名な巨大数であるグラハム数の作り方でした。巨大数の世界では、このグラハム数はまだまだ小さい方です。
このグラハム数を構成する方法よりも速いペースで数を大きくする方法はいろいろあります。興味のある方はぜひ調べてみてください。中学校の自由研究なんかにどうでしょうか。
written by k
*1:Wikioedia「グラハム数」https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%8F%E3%83%A0%E6%95%B0 より。