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【数学小話】aのb乗とbのa乗はどちらが大きいか

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さて、どちらが大きいか当ててみてください。実際に計算するもよし、概算や直感で判断するもよし、です。

 

 

問題

問題1. どちらが大きいか。

(1) 34と43
(2) 510と105
(3) 1011と1110

 

 

答え1.

(1) 34=81, 43=64より、34
(2) 510=9765625, 105=100000より、510
(3) 1011=100000000000, 1110=25937424601より、1011

 

さて、これらを見ると、こんな法則があるように思えてきます。

a<bならば、ab>ba

ようするに、指数の値が大きい方が大きい、という法則があるような気がします。

 

では、次の問題はどうでしょうか。
問題2. どちらが大きいか。

(1) 23と32
(2) 110000と100001

 

 

答え2.

(1) 23=8, 32=9より、32
(2) 110000=1, 100001=10000より、100001

 今回の問題は全て先ほどと逆の結果になりました。指数の値が小さい方が大きくなりました。どうやら一筋縄ではいかないようです。

 

 

問題3. 大小を比較せよ。

24と42

 

 

答え3.

24=16, 42=16より、等しい

 

なんと等しい例まで出てきてしまいました。もうわけわからん。

 

 実は、このような事実があります。

a<bを満たす自然数a,bについて、以下が成り立つ。

(1) a=1または(a,b)=(2,3)のとき、ab<b

(2) (a,b)=(2,4)のとき、ab=ba

(3) それ以外のとき、ab>ba

なかなか興味深いです。小さい方の値が1でないとき、たった2例を除き、指数の値が大きい方が大きくなるのです。何故そうなのかは後で分かります。

では、考える対象を自然数から0より大きい実数全てに広げて考えるとどうなるでしょうか。さらに不思議なことになります。

0<a<bなる正の実数について、abとbaの大小関係はどうなるか。

さて、これをどうやって解決すればいいかというと、高2で習う対数と、高3で習うlogの微分の知識を使います。まだ対数、logを習っていない人は、テキトーに流し読みしてもらって構いません。赤字だけ読めば十分わかるようになっています。

 

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logを使って解析する

 0<a<b とする。
a^b>b^a\\\Leftrightarrow \log a^b>\log b^a\\\Leftrightarrow b\log a>a\log b\\\displaystyle\Leftrightarrow \frac{\log a}{a}>\frac{\log b}{b}
ab<baのときも同様に考えると関数f(x)を、
\displaystyle f(x)=\frac{\log x}{x}\ (x>0)
とすれば、
a^b>b^a\\\displaystyle\Leftrightarrow f(a)>f(b)
ab<baのときも同様に考えると、f(a)とf(b)の大小関係とabとbaの大小関係は一致する。
f(a)という表記に馴染みのない方は、要するにy=f(x)という式にx=aを代入した時のyの値のことと思ってください。
y=f(x)のグラフを書いてみましょう。この程度であれば高3理系の定期テスト~入試レベルです。高3理系であれば微分して増減表まで書けるように。
\displaystyle f(x)=\frac{\log x}{x}\ (x>0)
1回微分、2回微分するとそれぞれ、
\displaystyle f'(x)=\frac{\frac{1}{x}\cdot x-\log x\cdot1}{x^2}=\frac{1-\log x}{x^2}

\displaystyle f''(x)=\frac{-\frac{1}{x}\cdot x^2-(1-\log x)\cdot 2x}{x^4}=\frac{2\log x -3}{x^3}


f'(x)=0 とすると、x=e
f''(x)=0 とすると、x=e\sqrt{e}
増減表は以下の通り。

f:id:hby:20190318014215j:plain

グラフは以下のようになります。変曲点は使わないので、結局2回微分の必要はありませんでしたが、計算練習、紹介ということで。

f:id:hby:20190318015645j:plainこのグラフは、x→0でy→-∞、x→∞でy→0となります。
グラフの最大値はx=eのとき1/eです。eはネイピア数という特別な定数で、e≒2.7です。
これと先ほどのf(a)とf(b)の大小関係とabとbaの大小関係は一致するとをグラフに当てはめてみると、このようなことが言えます。

xが自然数のときのf(x)の値を考えると、大きい順に、
f(3)>f(2)=f(4)>f(5)>f(6)>f(7)>...>f(1)
よって、例えば、
f(3)>f(2)だから、32>23
f(4)>f(7)だから、47>74

これが先程紹介した、自然数におけるabとbaの関係の理由です。

 また、xが0より大きい実数のときを考えると、次がいえます。

0<a<b≦eなら、常にab<ba

e≦a<bなら、常にab>ba

0<a<e<bなら、どちらの場合もあり得る

 ということで、一つ面白いことが分かりました。
xが0より大きく、eでないどんな実数でも、xe<ex
一番強いのはeの累乗でした(?)。つまり、
100eよりe100の方が大きい。
100000eよりe100000の方が大きい。
9999999999eよりe9999999999の方が大きい。
このようなことが成り立つのは、実数の中でもeのみです。

 

aとbがeの値をまたいでいるときは、実際にf(a)とf(b)を計算するか、直接abとbaを計算して比べることになります。
ただし、グラフの0<x<1の範囲ではf(x)<0で、x>1ではf(x)>0なので、0<a<1<bならab<baです。

 

eとは?

 ネイピア数eは、高3理系の数IIIでこのように登場します。
\displaystyle e=\lim_{n \to \infty} \biggr(1+\frac{1}{n}\biggr)^n
\displaystyle\lim_{n \to \infty}という記号は、nを無限大に持って行ったときに近づく値、という意味です。この式を見ると、式の言っている内容は、感覚的には「1の無限乗」になってその値は1になりそうに思えますが、実は、2.718281828459045...というある値に近づくのです。この値をネイピア数と呼び、eと表すのです。eにはさまざまな性質、特徴があります。有名なものでいえば、
\displaystyle e=\sum_{n=0}^{\infty}\frac{1}{n!}=1+\frac{1}{1!}+\frac{1}{2!}+\frac{1}{3!}+\dots
など。ほかにも、eは統計学金利計算などでも活躍します。

 

関連する有名な問題

\displaystyle e^{\pi},\  \pi^eの大小を比較せよ。 

 

大きいのは\displaystyle e^{\pi} です。
ちなみに、
\displaystyle e^{\pi}=23.1406...\\\pi^e=22.4591...
です。

 

 

 

written by k

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