【数学小話】1+√2が解なら必ず1-√2も解になる?
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2次方程式の解の公式はこんな形をしていました。
これを習い、そして2次方程式を解く計算問題をたくさん解いた当時、
「二次方程式が と表される数を解に持つとき、かならず も解にもつのか?」
と疑問に思いました。実際、この予想は正しいです。今回はその証明と、さらに進んで、
方程式が複素数 を解に持つとき、それと共役な複素数 も解である
ということなども見ていきます。
に対して のことを共役無理数、
に対して のことを共役複素数、などと言います。
注:この記事では、方程式と言えば、という形をしたもの、つまり「n次方程式」を指します。などといった方程式は考えません。
目次
具体例
問1
方程式 の解を求めよ。
解1
解の公式を使って、
問2
2次方程式 が を解に持つとき、aの値と、もう一つの解を求めよ。
解2
与えられた解を代入して、
もう一つの解は、 を解いて、
この問題はまさに、最初の予想を彷彿とさせるものです。
問3
係数が実数である方程式 が を解に持つとき、a,bの値と他の解を全て求めよ。
解3
解を方程式に代入して、
これを整理すると、
となり、a,bは実数だから
であり、この連立方程式を解くと、
もとの方程式は、
であり、因数定理を用いて因数分解すると、
となるので、
これはほんの少しの例ですが、共役な解をもつことは、皆さんも経験的に正しいだろうと感じているはずです。
係数が有理数ならOK
結論からいうと、係数が有理数ならば、予想は成り立ちます。
定理1(共役無理数解の存在)
係数が有理数の二次方程式が と表される数を解に持つとき、かならず も解にもつ。
注: A,B,Cは有理数、B≠0、 は有理数に直せないとします。
証明1
有理係数二次方程式 が を解に持つとする。(ただしA, B,Cは有理数、B≠0、 は有理数に直せない) すなわち
とするとである。展開して整理すると、
となる。ここで、 のみが無理数だから、
ここで、
②より、これはとなって0に等しい。つまり
これはも解であることを意味する。
文字が多くてややこしいですね。
に を代入して整理すると、
という形の式ができます。PもQも有理数だから、これが0に等しくなるには、P=Q=0だ、というのが前半です。
後半は、 に を代入して(まだ代入したものが0になるかはわからない)整理すると、
という形になって、P=Q=0だったからこれは0と等しい。だから解だ。という流れです。
さて、これで、 を解にもつなら共役な も解にもつことが示されました。そして、これは方程式の次数が上がっても成り立ちます。
定理1' (n次方程式の共役無理数解の存在)
nを自然数とする。有理係数n次方程式
が を解をもつとき、 も解にもつ。
(ただしA,B,Cは有理数、B≠0、は有理数に直せない)
ちょっと大変ですが、証明します。
で割り切れることを示す。
証明1'
とし、
ならば であることを示す。
を で割った商を、余りを とする。
①に を代入すると、 となるから、
は有理数だから、 、より
したがって、余りが0に等しいから、 は
で割り切れる。
①'に を代入すると右辺は0となり、
すなわち も解である。
よって、定理1'は示された。
係数が無理数のとき
係数が無理数ならこの限りではありません。
例
の解は
の解は
共役な複素数解
さらに高校の範囲に進んで、実数係数方程式が複素数解をもつとき、その共役な複素数も解となります。
定理2(共役複素数解の存在)
実数係数n次方程式
が複素数解 をもつとき、共役な複素数 も解である。
証明2
は解だから、
である。ここで式全体の複素数共役をとると、
は実数だから、
よって、 も解である。
係数の範囲からはみ出る解
さて、有理数、無理数などの数の包含関係を考えると、以下のようになります。
・有理係数方程式の解が無理数解を持つなら、それと共役な無理数も解にもつ。
・実数係数方程式の解が複素数解をもつなら、共役な複素数も解にもつ。
というのが、今日見てきた内容でした。係数が有理数で、解が有理数からはみ出た無理数なら、共役も解である。係数が実数で、解が実数からはみ出た複素数なら、共役も解である。
なにか法則ありそうですね。では、係数が複素数の方程式で、解が複素数からはみ出るものがあれば、そこで共役のようななにか面白いことがありそうですが、係数が複素数の方程式で、解が複素数でないものは作れません。残念。
このことは大学数学で、複素数は代数閉体である、と言われます。
Aが代数閉体であるとは、係数が全てAに属する方程式の解が必ずAに属することをいいます。
したがって、有理数、実数などは代数閉体ではありません。こういった話は数学科の大学2,3年で代数学という科目で習います。これを学ぶと、あの有名な「5次以上の方程式には解の公式が存在しない」ことが証明出来るようになります。
written by k