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中学生でも解ける大学入試数学14★ 2014年慶應(看護医療)

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おろそかになりがちな「定義」に関する問題です。

 

問題

(1) 有理数の定義をかけ。

(2) 各命題の真偽を述べよ。真ならば証明を、偽ならば反例を一つ挙げよ。

 (a) √5は無理数である。

 (b) r , sがともに有理数ならば、積 rsは有理数である。

 (c) aが無理数で、rが0でない有理数ならば、積 arは無理数である。

 (d) a, bがともに無理数ならば、積 abは無理数である。

 

ヒント、着眼点

有理数の定義はとても重要なのでこの機会におぼえましょう。

(2) (a) 平方因子を持たない自然数 a ( aは平方数で割り切れない自然数、という意味です)に対して√aが無理数であることの証明は有名なのでこれくらいは覚えて、自然と書けるようになるべきです。

(2) (b)~(d) 反例というのは、命題が成り立たないような例のことで、一つでも見つければよいです。数学の命題というのは、条件を満たすどんな数を持ってきてもいつも成り立つときを真といい、それ以外を偽といいます。

 

 

以下、解答

 

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解答

(1)

二つの整数 a, b (ただし b は 0 でない)をもちいて a/b という分数で表せる数

(wikipediaより)

ある互いに素な整数a,b(ただしb≠0)が存在して、a/bと表すことができる数

(筆者が用意した解答1)

既約分数で表される数

(筆者が用意した解答2)

(2)

(a)真

(b)真

(c)真

(d)偽

 証明と反例は解説の項目に。

 

解説

 (1) 個人的に、有理数といったら、既約分数(これ以上約分できない分数)のことと思うのがよいでしょう。それを無理数であることの証明に用いるので。

そして、既約分数であることを強調すると、「ある互いに素な整数a,b(ただしb≠0)が存在して」となります。

有理数の定義と合わせて無理数の定義もおさえておきましょう。wikipediaの表現を借りれば、

無理数は、二つの整数 a, b (ただし b は 0 でない)をもちいて a/b という分数で表すことができない実数

つまり有理数でない実数を無理数というのです。有理数の文章と比べると、文の最後の単語が「数」から「実数」に変わっています。これは重要なことで、数学において「数(すう)」というと、実数と虚数両方を含む表現となってしまいます。a/bと表すことができる虚数はないので有理数の定義は「数」でよいのですが、虚数のなかに無理数はないので、あくまで実数から有理数を取り除いた残りが無理数である、という意味が込められています。

 

高校までに習うシンプルに表現できる無理数の例として、√2、√3、√10、π、eがあります。eというのは自然対数の底というもので、ここでは詳しく述べません。

また、重要なこととして、有理数より無理数の方が圧倒的に多く存在するということは知っておくべきです。我々は、シンプルな表し方を知らないだけで、圧倒的に多く無理数は存在するのです。

(具体的に言うと、有理数は可算無限個、無理数は不可算無限個(非可算無限個ともいいます)存在します)

 

(2)(a)と(c)では、背理法を用いています。

 

(2) (a)証明

√5が有理数であると仮定する。つまり、ある互いに素な整数a,b(ただしbは0でない)を用いて、√5=a/bと表すことができるとする。この時、両辺をb倍してから2乗すると、

5b2=a2

左辺は5の倍数で、5は素数なので、右辺も5の倍数でなければならないので、aは5の倍数。そこで、

a=5x

とおく。これを代入すると

5b2=25x2

両辺を5で割ると

b2=5x2

右辺が5の倍数なので、同様にbは5の倍数。よってaとbが互いに素であることに矛盾。よって√5は無理数

 (2)(b)証明

a,b,c,dを整数(ただしb,dは0でない)とし、r=a/b,s=c/dと表すことができる。このとき積rs=ac/bdとなり、これは有理数である。

(2)(c)証明

aが無理数で、rが0でない有理数の時、積 arが有理数であると仮定する。

ar,rが有理数なので、有理数÷有理数であるar÷rの計算結果は有理数であるはずだが、この計算の答えはaで、これは無理数であるから矛盾。よって積arは無理数

(2)(d)反例

a=b=√2の時、積ab=2となり、これは有理数である。

 

 

 

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