日比谷高校のススメ

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東大院数学科を受験しました①

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タイトルの通りです。東大院数学科を受験しました。そのレポートをお届けします。問題の振り返り、反省を赤裸々につづります。

大学の数学科に興味がある人、これから数学科の院試を考えている人の参考になると思います。

 

大学院の入試問題がどんな感じかをまず見てみましょう。こまかい反省や受験生へのアドバイス的な物は次回に。

 

大学院入試

そもそも大学院入試は大学入試と違い、国立大学であっても複数受験できます。大学入試と違い日程が大学ごとに違うからです。例えば2020年度入試では東工大院は8/16,17、京大院は8/24,25、東大院は8/26,27です。私はこの3つを受験しました。

結論からいうと、筆記試験は3つとも合格しました。今現在、院試を全て終えて落ち着いたので記事を書いています。合格したかどうかはまだわかっていません。

 

大学院入試は、筆記試験と面接があります。

筆記試験は数学科は数学2つ、英語1つの試験を解きます。この結果をもとに筆記合格者を決め、残った人が面接に進みます。

面接では、自分1人対教授複数で面接が行われます。大学や分野によって教授の人数は変わります。ちなみに京大の面接は自分1人対教授20人でした。たくさんの目が同時にこちらを見定めるような目つきで見てきます。黒板に数式を書き間違えたりすると、2秒で「その式間違ってますよね」とか言われます。もうやりたくないです。

 

さて、数学科は特別ですが、ほかの理系の科では、英語の試験を行わない代わりにTOEICなどの外部試験の結果を出願時に提出しなければならないことがほとんどです。大学によってはTOEFLじゃないとだめ、など色々あります。数学科も大学によっては外部試験で英語を済ませるとこもあります。たしか基準スコアはTOEICで600くらいです。

 

では東大の院試の振り返りをしていこうと思います。まずはどんな感じの試験であったかを見てみましょう。

 

 

英語

東大院数学科の英語は毎年問題が決まっています。

和訳2問、英訳1問

和訳は、数学のエッセイ(昔の数学者についての文章)を訳すものと、英語で書かれた数学の教科書を訳すものがでます。エッセイはオイラーゼータ関数に関する文章でした。教科書は微分方程式でした。ちょっと見てみましょう。

Definition. An expression of the form

{\bf F}(D^k{\bf u}(x),D^{k-1}{\bf u}(x),...,D{\bf u}(x),{\bf u}(x),x)={\bf0}\ \ \ (x\in U)

is called a k^{th}-order system of partial differential equations, where

{\bf F}:\mathbb{R}^{mn^{k}}\times\mathbb{R}^{mn^{k-1}}\times...\times\mathbb{R}^{mn}\times\mathbb{R}^{m}\times U\rightarrow \mathbb{R}^{m}

 is given and

{\bf u}:U\rightarrow\mathbb{R}^{m},\ {\bf u}=(u^1,...,u^m)

 is the unknown.

うーん、おそらく数学科でなければ何言ってるかさっぱりだと思います。実は式や記号が多く、訳すときに日本語が少なくなるのである意味楽です。

 

英訳は、日本語で書かれた数学の教科書をそのまんま持ってきて、これを英訳せよ、というものが出ます。

\{f_1,...,f_m\} を正規直交系、すなわち、(f_i,f_j)=\delta_{ij}\ (1\leq i,j\leq m) なるベクトルの集合とすれば、次のようなことが成立する:

x=c_1f_1+...+c_mf_m,\ y=d_1f_1+...+d_mf_m

に対して、(x,y)=c_1d_1+...+c_md_m.

 逆にこのような性質をもつベクトルの集合\{f_1,...,f_m\} は正規直交系である.

 正規直交系である基底を正規直交基底という. 一般に\mathbb{R}^nの任意の部分空間Wが与えられたとき、Wの基底として正規直交系がえらべるか?それは常に可能である.

この問題がきつい。年によって線形代数だったり集合論だったりと、分野の予想がしずらい上、数学用語を英語でどう言うかをたくさん覚えないといけません。

 

いろいろ書きましたが、英語は受験生の差がほぼつかず、合否に影響しないです。

 

数学基礎

数学科が1~2年で習う内容の問題。ここが一番の稼ぎどころ。

線形代数微積が必答問題で、のこりからさらに2つを選択して合計4問解きます。私は微分方程式と集合位相を選びました。選択問題は他に、難しめの線形代数、難しめの微積級数の収束がありました。

 

数学専門

数学科が3~4年で習う内容の問題で、難問ばかりです。

問題は3問選ぶようになっていて、代数4、幾何4、解析5、その他5 からなります。その他は、微分方程式グラフ理論、確率統計などです。

期末試験レベルを十分超えていて、レポート課題として1,2週間かけて考えて解いてこい、と言われてもおかしくないレベルの問題かもしれません。

 

筆記は以上です。どの大学も上で述べたことがだいたい共通すると思います。

 

面接

大学院でどんなことを勉強したいか、などのおきまりの質問や、自分の専攻する分野に関する基礎的な知識を問う質問もあります。そこで数学的に間違ったことを言うと2秒で「それって〇〇ですよね」と指摘されます。人によってはかなり恐怖を感じると思います。さらに恐ろしいのは、筆記試験で解けなかった問題をいまここで黒板に解きなおししろ、なんてことを言われたりします。筆記試験で解けなかった問題がここで急に解けるようになるわけがありません。つまり、筆記試験が終わった直後から面接までの間に必死に調べて解かなければならないのです。(調べれば解けるとは言っていない) ちなみに筆記合格発表はその日の夕方や、遅くても次の日にはでます。猶予は1,2日しかないのです。

 

 

数学基礎と専門に共通していえることは、試験時間が長く、集中が途切れることに注意したい、ということです。自分も基礎の残り30分くらいは、計算ミスをたくさんしたり、今思えば簡単に思えることが全くわからずに悩んだりしていました。

基礎の試験時間は3時間、専門は4時間です。こんなに長い時間ずーっと考え続けるのは大変です。

 

長くなったのでここまで、次回は問題を詳しく見たり、院試の勉強はこうすればよかったなどの反省をしていきます。

 

次回

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