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【数学小話】フィボナッチ数列(黄金数)の神秘

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算数、数学が好きは人によく知られている、フィボナッチ数列

 

名前がついている数列で有名なものはフィボナッチ数列くらいです。あとはトリボナッチ数列やリュカ数列くらいでしょうか。今回はそのフィボナッチ数列と、それと密接に関係している黄金数というものについてです。

 

フィボナッチ数列とは

1,1,2,3,5,8,13,21,34,55,89,144,233,377,610,...

どのように数列が作られるかというと、連続した2項を足した値が次の項になる、というルールで作られます。

1+1=2,1+2=3,2+3=5,3+5=8,5+8=13といったように、次々と値を求めることができます。

高校の数列っぽく書くと、このようになります。

a0 = 0 ,a1 = 1

an = an-1 + an-2 (n≧2)

フィボナッチ数列はあくまで0,1から始まるものですが、しばしば最初の0を無視して、1,1から書かれます。 この記事ではその表記を採用します。

 

要するに、フィボナッチ数は最後の2つを足したら次ができる、というものです。

また、この数列に現れる数を、フィボナッチ数と呼びます。

 

 

 フィボナッチ数列のすごさ① 自然界に潜む存在

フィボナッチ数は自然界にしばしば表れます。これは、フィボナッチ数列といえばよく語られることなのでご存知の方も多いでしょう。

たとえば、花びらの枚数は、多くが3,5,8,13枚など、フィボナッチ数であることがほとんどです。

また、松ぼっくりや、パイナップルの皮、ブロッコリーなどにも表れます。

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松ぼっくりを根本から見たとき、松かさの並びの渦の本数を数えると、時計回りで13本、反時計回りで8本になりました。8も13もフィボナッチ数です。

 

植物の茎からのびる葉を観察してみると、葉の付き方にも特徴があります。

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これは筆者が家の近くで採取した生垣に使われるなんかの植物です。

下から順番に、葉ののびる方向を見てみると、0,5,10の葉がほぼ同じ方向になっています。いくつかの植物はこのように、葉が5枚で一周するようについています。5はフィボナッチ数です。

上からみると、それがより分かりやすくなります。

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 5角形が見えます。5枚で一周しているように葉がついていることが確認できると思います。

 

 

フィボナッチ数列のすごさ② 有理数を超えた存在

さて、足し算を繰り返すことで順番に項が求められる、自然数のみからなるフィボナッチ数列ですが、とにかく目的の番号の項のみが知りたい、というときに登場するのが、一般項です。n番目の項をnを使った式で表したものを一般項といいます。

\displaystyle \Large a_n = \frac{1}{\sqrt{5}}\biggl\{\biggl(\frac{1+\sqrt{5}}{2}\biggl)^n-\biggl(\frac{1-\sqrt{5}}{2}\biggl)^n\biggl\}

 

フィボナッチ数列のn番目の項の値は、少し複雑なこの式で表されます。例えば、n=6を代入すると8が、n=11を代入すると144がでてきます。

 

この一般項のすばらしさはいろいろあるのですが、その一つが、自然数の足し算の簡単なルールで作られる存在なのに一般項は無理数が登場する複雑な式になる」、という点です。一般項に√5という無理数が現れるのがおもしろいです。

 

普通、簡単な数列は一般項も簡単な形で表されます。

2,4,6,8,10,12,...

この数列は、2を次々足すことで作られる数列で、一般項はan=2nです。

0,1,3,6,10,15,21,28,36,45,55,...

この数列は、順に+1,+2,+3,+4,+5としている数列で、一般項はan=n(n-1)/2です。

 

このように、シンプルなルールで作られる数列の一般項はnのシンプルな式、せいぜい有理数の形で表されるのが普通なのです。しかし、フィボナッチ数列はシンプルなルールで作られる数列なのに一般項に無理数が出てくるのです。これがフィボナッチ数列が特別なものであるとされている理由の一つなのです。

 

 

フィボナッチ数列のすごさ③ 美しさを持つ存在

1,1,2,3,5,8,13,21,34,55,89,144,233,377,610,...

このフィボナッチ数列の各項を1辺とする正方形は下のように、きれいにらせん状に並べることができます。

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これをもとに対数螺旋と呼ばれる、ある螺旋と非常に近い曲線が得られます。

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この螺旋はひまわりの種の並び、オウムガイの渦巻きからハリケーンの渦巻き、さらには渦巻き星雲にまで現れるのです。*1

この正方形を次々つなげていく方法を無限に繰り返していくと、できる長方形の短辺:長辺がだいたい1 : 1.618...という比に近づきます。この比の長方形は最も美しい長方形と言われています。この1 : 1.618...という比は、黄金比と呼ばれています。この比はさまざまなところに現れます。

かの有名な天才、レオナルド・ダ・ヴィンチは人体の計測を熱心にとりくみ、以下の比率が黄金比であることを見つけました。

・頭頂から床までの長さとへそから床までの長さの比率

・肩から指先までの長さと肘から指先までの長さの比率

・腰から床までの長さと膝から床までの長さの比率

これだけではありません。これまでに人体に限らず多くの場面で黄金比が見つかっています。

・ミツバチの群れにおける雄の数と雌の数の比

パルテノン神殿やピラミッドなどの建築物、建造物の高さと幅の比

・DNAのらせん構造の一単位の長さと幅の比

 

微妙な測定誤差などできっちり正確に1:1.618...になっていないものも多いかと思いますが、それでもこれほど多くのものにおいて比がだいたい黄金比に近くなるのはもはや偶然とは言えないのかもしれません。人類は、宇宙は昔からこの比の美しさを知っていたのでしょうか。

 

 

・黄金数

さて、先ほど登場した1:1.618...という黄金比の1.618...という数はフィボナッチ数列にも表れます。

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フィボナッチ数列の隣り合った値の比を求めていくと、少しずつある値に近づいていくことが知られていて、その値は黄金数と言われていて、Φ(ファイ)と書かれます。

\displaystyle \LARGE \phi = \frac{1+\sqrt{5}}{2} =1.61803...

先ほど登場した黄金比は、1:Φのことになります。

フィボナッチ数列を{\displaystyle \textbf a_{n}}とすると、

\displaystyle\frac{a_{n+1}}{a_{n}} \rightarrow \phi (n\rightarrow\infty)

黄金数はΦと表され昔から特別な数として研究されていました。また、驚くことに、この値はフィボナッチ数列の一般項の式にも入っています。

また、1:Φの比を黄金比と呼びます。

Φには特殊な性質があります。

\displaystyle \frac{1}{\phi}=\phi-1

\displaystyle \phi^2=\phi+1

\displaystyle \phi-1:1=1:\phi=\phi:\phi+1

\displaystyle \phi=1+\frac{1}{1+\frac{1}{1+\frac{1}{1+\frac{1}{...}}}}=\sqrt{1+\sqrt{1+\sqrt{1+\sqrt{...}}}}

また、1辺の長さが1の正五角形の対角線の長さはΦになります。

これらは黄金数に関して知られているほんの一部です。

正五角形といえば、先ほど登場しましたね。

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長い年月を経て、植物が少しでも生き残る確率を高めようと進化した結果、正五角形にたどりついたのでしょう。

このように、フィボナッチ数列、黄金数には自然界での理にかなった神秘的な美しさがあるのです。

 

 

・関連事項

 

フィボナッチ数列に似た数列として、リュカ数列トリボナッチ数列などがあります。

リュカ数列は、最初の2つが2,1であり、その後はフィボナッチ数列と同じように足し算で求められます。

リュカ数列

a0 = 2 ,a1 = 1

an = an-1 + an-2 (n≧2)

2,1,3,4,7,11,18,29,47,76,123,199,...

 トリボナッチ数列は、フィボナッチ数列の、3つの足し算になったものです。

トリボナッチ数列

a0 = 0 ,a1 = 0 ,a2 = 1

an = an-1 + an-2 + an-3 (n≧3)

0,0,1,1,2,4,7,13,24,44,81,149,274,...

 

 n段の階段を、「1段あがる」と「2段あがる」を組み合わせてあがるとき、その全パターン数はフィボナッチ数列n+1番目の項と一致します。

1,1,2,3,5,8,13,21,34,55,89,144,233,377,610,

例えば、4段の階段を上るときは、(1,1,1,1),(1,1,2),(1,2,1),(2,1,1),(2,2) この5通りの上り方が考えられます。フィボナッチ数列の5つめの値は5です。同じように、10段の階段ならフィボナッチ数列の11つめの値なので89通りです。

たまに、大学入試などでも、場合の数や確率の問題で、フィボナッチ数列的な考え方が要求される問題が出題されます。

 

さらに、フィボナッチ数列を拡張したものとして、フィボナッチ多項式が存在します。

フィボナッチ多項式 {fn}

f0= 0 , f1= 1

fn = x fn-1 + fn-2 (n≧2)

0, 1, x, x2+1, x3+2x, x4+3x2+1, x5+4x3+3x , ...

この多項式も面白い性質があり、nが素数の時のみ、fnが(有理数の範囲で)因数分解できないのです。

 

このように、フィボナッチ数列は単なる足し算の数列だけでなく、自然のうつくしさから素数にまで関係する存在なのです。

ちなみに、世界中にフィボナッチ数列にまつわることを研究する団体があり、日本には「日本フィボナッチ協会」という組織が存在します。それだけフィボナッチ数列は多くの人を魅了しているのですね。

 

 

今回はここまで。

 

 

 

 

 written by k

*1:桜井進(2009)『感動する!数学』PHP文庫.

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