日比谷高校のススメ

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twitterで出題した物理クイズ2題の解答

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5/27,29にtwitterで出題した物理クイズの解答です。2題両方の解答を載せました。

 

第1問

形も大きさも全く同じで重さだけが違う2つの銃弾があります。これらを2丁の全く同じ銃で真下に向けて同時に発射しました。先に地面に着弾するのはどちら?

twitterの結果は以下のようになりました。

軽い銃弾 15%

重い銃弾 15%

同時 70%

 

答え

軽い銃弾

 

解説

「同時」と答えた方が多かったように、この問題文を読むと直感的に同時だと感じてしまうでしょう。特に物知りな方は、ガリレオピサの斜塔から重さの違う2つの玉を落としたら同時に着地したという有名な実験をご存知でしょう。

「それならよけい答えは同時じゃないか」と思うかもしれませんが、この問題はガリレオの実験とは大きな違いがあります。それは、2つの銃弾の初速(運動開始時の速度)が違うのです。ガリレオの実験は「2つの玉をもつ手を同時に離す」ので2つの玉がどちらも速度0で落下を開始しています。それに対しこの実験は銃で弾を打ち出すので、最初からある速さをもって落下を開始します。

同じ銃を使うので、軽い銃弾も重い銃弾も同じ力で打ち出されます。では、どちらの方が初速が大きくなりますか?当然、軽い銃弾の方です。軽いものほど小さな力でよく動くのは当然です。ボウリングで軽い玉と重い玉を同じ力で投げると軽い玉の方が速く転がりますよね。

銃から打ち出された時点で重い銃弾より軽い銃弾の方がスピードが出ているので、そのまま軽い銃弾の方が先に地面に届きます。

 

 

ここからは高校生以上向けの説明です。

軽い銃弾の質量をm、重い銃弾の質量をMとします。

銃の発射機構でFtの力積がかかったとき、それぞれの銃弾の速度vm、vMは、

Ft=mvm、vm=Ft/m

Ft=MvM、vM=Ft/M

m<Mなのでvm>vMと分かります。

落下している物体は質量に関係なく重力加速度gが働くので、軽い銃弾の方が常に速度が大きく、軽い銃弾が先に着地します。

より厳密な議論がしたいなら、銃弾のはなたれる高さをhとし、力学的エネルギー保存の法則を用いてもよいかと思います。

 

 

 

第2問

水中に置かれた天秤で鉛の塊とガラスの塊が釣り合っています。天秤、鉛ブロック、ガラスブロックを水中から引き上げ、水平な地面に置くと天秤はどうなる?

 

 

答え

ガラスの方が下にかたむく

解説

 この問題を解くために注目すべきことは、「物体の質量と体積、浮力」です。浮力については、中1で最初に習うかと思います。中学校では、「浮力とはその物体がおしのけた分の水の体積に比例した力がかかる」という説明がされていたと思います。

水の中に置かれた天秤に乗せられた鉛とガラスはそれぞれ水による浮力が働いています。具体的に言うと。それぞれの物体の体積に比例した力が働いています。では、鉛とガラスの体積はいくらでしょうか。

この問題では鉛とガラスの体積について何も書かれていませんが、「水中の天秤で釣り合う」という条件から考えてみましょう。

天秤が傾くかどうかは、天秤に乗っている各物体に働く下向きに働く力の大小により決まります。これを頭に入れたうえで、考察していきます。

鉛とガラスの密度を考えます。Wikipediaで密度を調べると、

鉛 11.34g/cm3

ガラス 2.5g/cm3

とありました。(ガラスは種類により微妙に密度が異るので、今回は代表的なフロートガラスの密度を採用)

さて、天秤で鉛とガラスが釣り合っているとき、ガラスの方が体積が大きいです。なぜならガラスの密度が鉛の密度より小さいからです。水中で釣り合うというのは次を意味します。

2つの物体にそれぞれ働く重力からそれぞれにかかる浮力を引いた差が等しい

大雑把な議論になりますが、鉛の体積が1、ガラスの体積が2で水中で釣り合っているとします。すなわち水中でお互いの”重さ”が等しいとします。このとき鉛には浮力1が働き、ガラスには浮力2が働いています。ここで水から引き上げる、つまり浮力を取り払うと、水中でのお互いの”重さ”に対して鉛はそれまでかかっていた浮力1の分だけ”重く”なり、ガラスは浮力2の分だけ”重く”なります。そうすると、ガラスの方が鉛より重くなるわけです。

 

ここからは高校生以上むけの説明です。浮力、重力を具体的に計算します。

鉛の体積をv、ガラスの体積をVとします。(v<V)

鉛の質量は11.34v、ガラスの質量は2.5Vで、それぞれに働く重力は11.34vg、2.5Vgです。

水中に入れるとそれぞれ浮力は(体積)×(水の密度)×(重力加速度)だけ働きます。水の密度はほぼ1なのでここではぴったり1として、浮力はvg,Vgだけ働きます。

そうすると水中でお互い下向きにどれくらいの力が働くかというと、

鉛は11.34vg-vg=10.34vg

ガラスは2.5Vg-Vg=1.5Vg

これが釣り合っているので

10.34vg=1.5Vg

V≒7v

水中で鉛とガラスが釣り合うとき、ガラスの方が約7倍体積が大きいことが分かりました。改めて鉛の体積をv、ガラスの体積をV=7vとし、空気中の天秤に置くとどうなるかというと、

鉛に働く重力 11.34vg

ガラスに働く重力 2.5Vg=17.5vg

ガラスに働く重力の方が大きいので、ガラスの方が下に傾くことが分かります。 

 

 

ちなみに、質量と重さに関連して、学校や塾などで「月は重力が地球の1/6なのでばねばかりで質量は測れない。天秤で量ろう」という説明がされているかと思いますが、厳密には天秤では正確に量れません。

水中の天秤で質量を量りたい物質を分銅などで「量れた!」となっても、その天秤を水中から持ち上げると、量りたい物質が分銅と同じ密度でないかぎりどちらかに傾いてしまいます。

同様に、地球と月では空気による浮力が考えられ、地球で「量れた!」となっても、月へもっていくと空気による浮力が減って天秤は傾きます。

 

かなり難しい、抽象的な、理系ホイホイな話をしてしまいました。個人的にはこのような事象にたいする空想的な考察をすることは大好きです。

 

 

 

 

 

 written by k

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